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第十八話 金魚屋さん
園芸部員全員でとある駅で待ち合わせをして、そのお店に行った、おじいちゃんから前もって連絡はしてもらっていた。
今の時期、お祭りなんかで使う金魚も扱ってるので忙しいそうだ。
でっかい看板には金魚の文字、金魚屋のかわいい文字が消えかかっている古い引き戸の窓ガラス。
店先には、大きな箱、というかプールに金魚がいっぱい、気持ちよさそうに泳いでいる、そこには一回百円の文字。
「まさか金魚すくい?」
あり得る、入れ物がある、ぽいまで発見した。
「いらっしゃい」
この間のじじぃ、いや、いや店長さんと言うか店主さんだよね、じいさんが出迎えてくれた。
「スゲー」
「きれー」
「プロですか?」
「当たり前じゃ!」
俺たちはあんぐりと口を開けたまま見回す、天井いっぱいに積まれた水槽。アクアリュウム、それも大きな水槽の中には、魚はいない、でも、水草と、木、それに花もある、芸術品だ。
もちろんペットショップだから、グッピーやメダカ、たっかいアロワナなんかもいるしザリガニもいた。水族館よりいいかもタダで見れるし。
先輩は、材料の話をしている、植物の値段なんかを聞きながら。よろしくお願いしますの声がしていた。
俺たちは集められると若い店員さんが説明してくれた。
「よし、それじゃあ、この水槽でやってみようか」
実際に目の前で作ってくれるという。
水槽に市販されている袋から砂利を開けた、ホースの水がどんどん汚れを舞い上げるように入っていく。
ある程度入ったところで斜めにしてしまった。
「きれいなもの流れちゃう」
「いや、見て、汚れだけが舞い上がって、大きな粒は、下にたまっていってる」
水量があるのか、ある程度水の力で汚れを下からかき出しているのだ。
「早い、もう水が澄んできた」
「さてこれくらいでいいかな」
斜めにしてあった水槽を平らにして、砂利を均す、でも泥のようなものは少ししか舞い上がらない、ほとんどきれいな水のままだ。
水槽からはまだ水があふれている。
「水止めないの?」
「これから植物を入れるだろ、それからも汚れは出るしね、水はちょろちょろでも出しっぱなしなんだ」
先輩たちはそれを動画で撮影している。
植物の入った小さな水槽を持ってきた。
「水槽のほうがいいんでしょうか?」
「俺は、中の様子がわかるからこうしてる、バケツから入れる人もいるけど、せっかく横から見て楽しむんだ、このほうがいいだろ」
みんなが納得する声がする。
大きなピンセットを使い植樹していくのかと思いきや、先に、大きなものを入れるんだそうだ。
「やっぱり、木や石があったほうがいいのかな?」
「部長さんの話を聞くと、あったほうが動きは出るね」
溶岩のような、穴がいっぱい開いた石や、木を配置していく、その中に、大体でいいと言いながら水草を入れ始めた。
配置が決まると、束ねてあるものなんかをここで取り、大きい塊から静かに分けるようにピンセットでひとつずつ根をつまみ、ぎゅっと底まで入れる。
早い、それにさすがにプロ、何もなかった砂利の上に花畑のようにいろんな種類が並んでいく。
「それなんですか?」
「きれいだろ、苔の一種なんだ、水につかっても強いし、黄色い花が咲くんだよ」
岩にシート状のコケを張り付けていく、それもピンセットだけで、器用に穴に埋め込み、水圧で捲れたり(まくれたり)はがれないようにするのがコツかな、なんて言いながらどんどんできていく。
「植物でも、こいつらは水の中じゃないとだめ、だからできるだけ空気中に出さないようにしてあげて、できるだけ素早く根を傷つけないように横に滑らせるように埋める、だから、スケッチとバランスは何度も書いて決めたほうがいいかもね、さて、それじゃあ水を半分捨てて、きれいな水を入れよう」
重い水槽はもう一人では動かすことはできない、バケツで水を汲みだすけど、大胆だ、ざぶんと入れてはくみ上げ、半分捨てた所で台に上げ、水を静かに脇から入れ始めた、もう汚れも砂利も巻き上げることはない。
そして、エアポンプと、蛍光灯をセットして。コンセントに差し込んでスイッチを入れた。
うわー!
「なにこれ」
「水族館だ」
「やべ、なきそ」
「こんなの作れるのかな?」
水の中にできた森、今にも動物が飛び出そう。
「でもな、やっぱり、こいつらの棲み処なんだ」
そこに小さな魚が入った。
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