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第十話 シェルター
豊田君に聞いた、今話してるのは誰?
知らないという、隣にいる女子、先輩が教えてくれた。
隣の大学にいる人たち、彼らもまたエリート。守られるべき存在だそうだ。
説明が始まった。何度か聞いてるものもいると思うが、初心に帰って聞いてもらいたい。
この施設は、核爆発級の事故が起こっても守られる施設だそうだ、そして、ここにいるものが人類の最初のものとなる。
俺はものすごい悪寒を感じた。
そうか、だからこその寄付なのか。
ここの設備は、土田さんのような人たちが手入れをするのだそうだ、それは俺たちを、守るためでもある。
外との連絡は、ちゃんと機械室があってそこから衛星を使ってこの国の監視システムの情報を得るそうだ。
一時間後、解除の連絡に、みんなが安どの声を出した。
隣にいた先輩に話を聞いていた、これだけではない、地震なんかの時も避難するそうだ。
そして、みんなが何もなかったように教室に戻る。
「テストは?」
「そうだ、どうなるんだ?」
「さあ?」
「もう、いやんなる」
そう、居残り、みんなが帰った後、四人集められてのテスト。もう終わった後大笑い。
半端な時間、健が部室に行かないかと誘った。
美術室、いろんなにおいがする。
「ちわー」
「あれ、あそうか、居残りか」
ども、と言いながら俺たちは入っていった。それでも、まだお昼を回ったばかり。
「原ッチだけ?」
「うん、みんな帰った」
生徒は三時間目のテストが終了した時点で全員強制帰省させられたんだってさ。
「そうか。飲み物もらいまーす」
紙コップをもってきて、俺たちにジュースをよこした。
どうだった、初シェルターはと聞いてきた。
どうして知ってるのか聞いた。あれはシークレット事項だったはず。
「うん、うちの兄貴が大学にいるんだ、私も一回だけ代わりに入ったことがある」
「それじゃあ、兄弟でも、一人しか入れないの?」
「そう、守られるべきものは一人、それじゃなきゃ公平にならないでしょ」
「でもそういう問題じゃないと思うけどな」
「自分の家や会社ならそうかもしれないけど、ここは公共の場だからね」
原先輩はそう言った。
あれ?生徒会は?
私は辞退したという、部活の方を優先、兄がいるからそこは好きにさせてもらっているというのだ。
ふーん。
公共の場、それでも俺たちだけが残るというのにはゾッとした。
ミサイルは、グアムを狙っていて、アメリカは、まだ膠着状態にある、日本も撃ち落とせる状態にしておくのだそうだ。まだまだピリピリしそうだな。
景気回復と言っても税金が上がっているのと、あちこちで起こる自然災害で、物は高くなっている。この間も、大手の会社の倉庫が燃えて二週間以上もくすぶり続けたなんてことがあって、聿さんは忙しそう。ただ、母さんは会社を辞めた分、家の事や家族といる時間が長くなって嬉しそうだ。
「ただいま」
「お帰り」
「おかえりー!」
末っ子?の怜が飛び込んできた。
怖かったねという。
彼もまた守られるべき存在なのだろうか。
「兄ちゃんお帰り!」
マーの顔を見たとき、思わず顔がゆがみそうになった。
そこには真もいて、母さんもいて、俺はなんだか泣きそうになった。
真と怜が来てと俺の手を引っ張った。その後ろからマーも付いてきた。
じいちゃんたちの部屋を通り過ぎて、俺は入った事のない空間へときた。
「こっちがもともとの玄関だったんだって、今は裏に行くときしか使ってないんだってさ、こっちに来て」
その玄関のすぐそばの扉を開けたマー。
地下室?
階段が下に向かって伸びている。
ドアを開けた。また階段、ドア。三枚のドアを開けた。
「うわ、何ココ?」
「ココね、映画を見る部屋なんだって、音楽もできるよ」
すごい施設だ。でも・・・
端には、水や食料なんかが積まれている、ココもシェルターの役目を果たしているのか?
「ここに入ったのは昼前?」
「うん、ほら、変な放送があるじゃん、国民向けのすぐだったな、先生に家に帰れって言われてさ、何が起きたのかわかんないまんま車に乗って帰ってきた」
すごいねと言っているが、俺の涙腺はそこで崩壊した。
「兄ちゃんどうしたんだよ」
「ちーちゃん泣いてるの」
「何で?俺もなく、エーン」
「ごめん、ごめん、何でもないから」
学校から近いからそうなったんだろうなと思い安心して階段を上っていった。三人には慰められたけど。改めて思った、大きな家にはそれなりの事があるのだ、これは探検せねば。
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