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第十一話 ああ、夏休み
高校生活はそんなに甘くはない。夏休みに入ると、課題の山だった。
「遊びたーい」
「うっせーな、行けよ、俺はさっさと終わらせる」
海外なんかに行く人もいるため、夏休みは二か月と長い。七月に入ると同時に休みに入った。その代わり冬休みは短いし、春休みはない。
セキュリティーの関係で、学校内に入ることはできない。それでも運動部各部活は、すんごい部室を外に持っているから、十分だ、でも、文化部なんかは部室があるわけじゃないから、ほとんどが休みらしい。
俺たちは、夏野菜の収穫が始まるから、何回か、集まるけど、現地集合だしな。
まだ、小学校も中学も休みじゃない、だから、今のうちに勉強を片づける、そうしないと。
「と、なんだよ」
「あいつらの宿題の手伝い、考えてもみろ、観察日記や、毎日の天気そんなのさせられるんだぞ、泣き疲れたら最後どこにも行けなくなる」
「まじで?」
「まじだ」
やると言って、健もやり始めた。
中学までの、与えられたものじゃない、自分で予習をしないとついていけない、教科書一冊分の宿題が各教科、マジ大変だ。
やっと下も夏休みに入った七月下旬。宿題をしろ、遊べなくなるぞと脅す。さすがにクーラーの利いた部屋、はかどる。
でも、
「なんでこんなに暑いんだよー」
「少しぐらい我慢しなさい、クーラーばっかりじゃ体へんになるんだから、少しはいいの、あとで水浴びするんでしょ」
母ちゃん、強制リモコン操作で没収。
そうです、チビに頼まれました、プールを出すんだそうです。
「あーだめー、壊れる!」
「健やめろよ、アナ空く」
「いい―サイコー、気持ちいい!」
小さな子供用プールに一人ではいってるやつ、もう。
「だめだ、大きいの買う?」
「しまうのが面倒だ」
「プールいく?」
マーが宿題終わったらな。
「えー」
「えー、じゃねえ、てめーだけあとで泣いても知らねえからな」
なんでよー!
いっつもだろ、もう、あの家じゃないんだ、自立しろ、自立。
ブーとぶんむくれている奴。
「お、懐かしいな、プールか、いいのぉ」
そこに現れた爺ちゃん。
おじいちゃんも入る?と聞く怜。
笑って無理だというじいちゃんは遠くを見ていた。
「そうだ、おい、お前ら、大きいプールに入りたいか?」
「入りたい!」
そりゃね。
「どこ、海外?」と言ったのは健だ、やっぱりずれてるな。
「バカ者、家のじゃ」
ハハハ怒られてやんの。
家にあるの?どことみんなが探す。爺ちゃん指で刺した先?
「池?」
「池だよな」
「池だな」
後だな、後、と言って爺ちゃんはいっちゃった、その後それでも小さなビニルプールであそんだ。
夜。聿さんに真と怜が聞いた。
「ああ、プールだよ、小さいけどな、もう入らないから、魚入れたんだ」
「まじ?」
ちゃんとプールサイドもあるじゃないかという。
プールサイド?みんなが考えた。
「まさか・・・藤棚?」
「さすがーチーちゃん、そう、あそこはちゃんとしたシャワーもあるよ、ただなーもう何十年も使ってないからな」
ぎく!それって・・・
みんながじいちゃんを見た。
爺ちゃんの膝の上には怜が鎮座、怜の手を握って
「これだけ人がいるんだ、魚もきれいなところに入りたいよなー」
まじかよ。
「まさか?」
「池の魚」
「食う!」
「食わねえよ、移動させんだよ」
「どこによ?」
「はー、滝のある方ですよね」
「さすがーノンちゃん」
さすがじゃねえよ、肉体労働ばっかり。
ただ、大きな魚もいるということで。
わかっている人が来るんだけど・・・もったいぶる爺ちゃん、なんだか一番楽しそうな気がする。
プロ?魚屋さん?
「あたりー、金魚屋さん」
金魚屋さんなの?とじいちゃんに聞く真、怜はもう興奮して膝の上でジャンプしてる。
「今度お店にいこうか?いっぱい魚がいるよ」いいのという真と怜は聿さんと行けるのがうれしいのかマックスで、キャーと言っている。
町のペットショップ、淡水専門店らしい。アクアリュウムもやっているかとい聞いたらやっていると教えてもらった。爺ちゃんの知りあいらしい。
土曜日、その日はみんな休み、兄ちゃんの彼女も来た。
「ほら、それ捕まえないと、水ぬけねえだろ」
両手を腰に当てあーでもないこーでもないという爺は店長さんらしい。
「あのじじぃなに?」
「指示してるだけじゃん」
「キャー、逃げちゃう」
なんて、みんな楽しそうだけど、魚を入れる池を掃除するのに一日、ここは業者が来て掃除と補修をしていった。夜のうちに水を入れ、今日、魚を移動それも半分、また明日も魚の移動、明日は金魚さんの従業員も来てくれるんだって。生臭いし、鯉なんかは一匹数十万するのもいたりで、小さいのから、どうすりゃこんなにでかくなるんだと言うぐらいでかいのもいた。もう大変だった。
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