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第十二話 急に言われても
ちび達もいたけど、基本俺とマー、健の三人が動く羽目になった。金魚屋さんからも人は来たけれど、魚の移動だけで、掃除は俺たち、高圧洗浄機でこけなんかぶっとばしていく。
水を抜いて掃除すること一週間はいろんなものの修理が始まり、大工さんたちが来てくれた、そこはプロじゃあないとね。やっと三日後、プールに水が入っていく。結構でかくてびっくりだ。十五メートル三レーン分もある。水道代だけで大変そう?そこは、水まきや洗濯、いろんなのに使うわよと言う母ちゃんとばあちゃん、いいのかねー?
「うへー、気持ちいい」
「雨降ったらどうするの?」
「シートでもかぶせるんじゃね」
「学校のそんなことしないよね」
「薬入れるからな」
「すごいね、星」
「お風呂みたい」
「水、つめてー、気持ちいい!」
まだ半分も入ってないプールに俺たち兄弟三人と健、大きいのが四人寝そべっている、熱帯夜、これで涼しい。
次の日、やっと水がいっぱいに。せっかく俺たちが頑張ったのに、待っていたのは。
ドカドカとなる音楽。
ザプーンと飛び込む音がする。
大人たちは酒を飲みプールサイドでバーべQ、いつのまにかライトアップまでされている。もちろんプールにも入っている若い姉ちゃんたちの水着姿を見ていた。これでも本社の一部の人、そうだよな、支店はいっぱいあるんだもんな。
ブー、なんで?というマー。
「会社の慰安だってさ」
「旅行、行けよな」
俺たち三人は二階の窓からそれを見ていた。
ノックの音。
「はい」聿さんが立っていた。ちょっと来てほしいという。
俺だけ?そうだと言い、下へ。
じいちゃんたちの部屋の奥にある応接室、入ったのは初めて、のぞいたことはあるけど。
会社の人を紹介された。
園芸部の人だそうだ。
そこで俺は、仕事の話を聞いたんだ。ずらりと並ぶ写真に書類、俺の前に広げてみせる。
「では先に、本年度の売り上げ見込みにつきまして、昨年度より、大幅に売り上げが伸びております。千弘さまにご提案いただきました、ガラスの商品は、夏が過ぎても続けたいと思っております。さて、秋から冬にかけ、クリスマスまでの間閑散期に入ります、何かご提案はございますでしょか?」
は?何それ、考えたこともないし、急に言われても、何のこと???
聿さんは、そこに俺の部活の写真を持ってきた。
「ああ、これ、十月から始まるんだ」
なんですかと担当者がのぞき込む。
説明をしてくれないかと言われ話した。
「全国ですか、へーこれはいい、優勝作品の展示なんか目を引きますね」
「近くの高校から出店してもらえば、各支店で見れるよね、高校に行けばこんなことをしてますよってアピールにはなるよね」
なんの話だ?
「園芸の甲子園ですか?社長、これいいです、少し練り上げてもいいでしょうか」
「いいかな?」
と見せたのは、園芸コンクールの去年のパンフレットだった。スゲー、一般の人もあるのか。
「言いも何も、俺はわかんないし、売り上げ貢献できればいいんでしょ?」
「だそうだ、できたらこの子に先に見せてくれ、ほかの根回しはそのあとだ」
「協賛でもいいですね、会長がお好きですし」
「任せる」
「かしこまりました、お忙しいのにありがとう存じます」
ねえ、なんのことですかと聞きたかった。
男性が出ていくと今度は女性が入ってきた。
あ、この人確か。
お久しぶりです、と俺の方から声をかけた。
「お久しぶりです、覚えていてくれたんですね」
「俺には衝撃的でしたから」
そうでしたかと言い微笑んだ彼女は、モデルの仕事をした時にいた方だ、下着、白はなまめかしいと言っていた人。確か若いけど部長さんだって言ってたな。
「秋冬物です、前回は前の年を上回りました。ヤングメンズは、この二人で決定です」
そこには俺と健の写真、卒業式の前にスタジオで取ったものだ。
「レディスも、年代も近い素人に頼むつもりです」
写真がある、これだもんな、モデル事務所も大変だよな。
「撮影はいつものところか?」
「はい、一週間オーストラリアになります」
へ?何、オーストラリア?コアラが浮かんだ。
「何人ですか?」
「モデルは少数、これだけです、スタッフは現地で頼みますので、前回より少ないかと」
「きみに頼んでからだいぶ削れてうれしいよ、これからもお願いします」
「未来は、彼らにかかってますからね、そう、そう、健君は?」
二階の部屋にいますけど・・・
「そう、社長お願いしますね、原案OKなら使いますので、早めに返事ください、では失礼します」
バイバイと手を振っていった。
「何?原案て」
「健、あいつ、漫画すきだろ?」
マンガじゃないよね、まあそんなのも書くけど。
これなと見せてくれたのはキャラクターがいっぱい書かれたスケッチブック。
「かわいい、ナニコレ、アイツが書いたの?」
「うん、なかなかだろ、これをオリジナルにしないかという案が出ていてな」
へー、あいつ、夢が一歩現実になるかもしれないんだ、すげーな。
そして俺の前に日程が置かれた。
「行ってもいいの?」
「お願いしたいんだけどな」
「やった-聿さんありがとう!」
そこは素直に喜んだ、海外にいける、夢のようだ。
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