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第十三話 初めてづくし
それからは忙しくて、健とやっぱり課題早いうちに終わらせておいて正解だったなと言いながら、俺は弟たちにお土産を頼まれ、初めてパスポートを作り始めての飛行機に乗っている。
健もオーストラリアは初めてだそうだ。八月、南半球は真冬の撮影、どんなことが起きるのかもうわくわく。
たった一週間で終わらせる撮影は、大変だ。あの姉ちゃんたちも来ていた。
「久しぶり!」
なんて、手を合わせて喜んでいたけど、どうも暗い女の子がいる、見た目きれいなんだけど、中に入ってこようとしない。
健はほっとけというけど、なんかな。
「ねえ、一緒に遊ばない?」
ふんとそっぽを見られた。
いいか、
「チー」「ちーちゃん」「千弘君」
みんなが呼ぶ、俺はその子から離れた。
外へ出た。
乾燥しているからか、風がめちゃくちゃ冷たい。
「雪だ!」
「撮影するわよ、溶けないうちにするから早く!」
朝、お日様が上る前から撮影が始まる、とにかく雪景色がほしいのだ撮影場所はホテルのそばだけど、海外だからそれだけで絵になる。
「チーフ、ちょっと」
みんながそこを離れた。
「これはまずいな」
そんな声が聞こえてきた。
どうしたのか俺たちは後ろから覗き込んだ。
「キャラ、かぶってんじゃん」「どうするよ」
何かあったんですか?
レディス物のТシャツが大手カタログ販売店とかぶってしまったのだ。
メーカーや問屋は同じものを使う、ましてやТシャツのようなものは、ロゴだけで、何十万種類とあるのに、それが同じもなんてありえないと言っている。
「あ、そうだ、チーフ、健のは使えませんか?こいつかっこいいロゴなんかも書いてるんですよ」
と健の背中を叩いた。書いてるって言ったってなー、と頭をポリポリかいていた、なんだかうれしそう?
「プリンターないんですか?こんな島国なら、Тシャツ作るところあるじゃないですか?」
考えていたチーフは
「健君、スケッチはあるの?」
「いや、携帯に何枚か」
「かける?」
「まあ書こうと思えば」
「レディスは中止、すぐにメンズに入って、健君、携帯持ってきて、スケッチブックと色鉛筆、カラーペン大至急意して、すぐにプリンターあるお店探して、白Tシャツ用意!色物も準備して!無地のТシャツ!モデルさんに説明して、早く、すぐに始めるわ!」
長そでが無くてもいい、半そではジャケットなんか上衣で隠せばいい。
「お、これいいな」
「採用でいい?」
「なあ、これ文字、だけ変えようか」
「ラブじゃないほうがいいな、ストップみたいなのがいいな」
みんなから注文が出るのをかいていく健。手の空いているモデルさんたちがいろいろ手伝ってくれる、時間がない。
「サイン入れて」
「俺の?」
「そう、ほかに使われないために」
「これでいい?」
「もっとかっこいいのはない?」
「んー、こんなのは?」
「うん、いいわね、そっちはどう」
「どうですか?」
プリンターから出したシャツは湯気を出していた。
ヒューと口笛が鳴った。
「いい、かっこいい」
「メンズも行けそうですね」
「とりあえず、レディスの撮影初めて」
色鉛筆の淡い感じが女の子らしくて。あのつんつんした感じの子が来てポーズをとると動きが出た。
「彼女素人じゃないわね」
「でも事務所の所属はないって」
「まあ、ココにも二人いるわけだし」
「悪かったな素人で」
「いや、いや、未来の社長さんですから~」
「あーそれ嫌味」
なんていいながら笑っていた。
何とか時間ギリで出来上がったシャツ、もう大事に持って帰ってきちゃったよ。
Hotelからは出ることが出来なかったし、お土産?もう時間が無くてまた来ようね、なんて約束したんだよね。
帰りの飛行機は、みんな爆睡、超ハードな一週間だった。
まだ眠い、時差、きつい。
ピロン
撮影だよ、明日、十二時から、倉庫スタジオ
ラジャー、ポンとスマホを投げた。
隣でもなってる。
「う、うわー!」
何事!
シャーとカーテンを開けた。
「どうした!」
スマホを俺に見せる。
「はー?」
そこには、Тシャツ、オッケーいただきました、つきましては、オリジナル商品登録したからね、健先生、これからもよろしく♡
その下には、登録番号なんかが乗っていて、Tシャツが出てくるでてくる。すんごいことになりそうだ。
「健先生だって」
嬉しそうというか、なんか変な顔の健に笑いが出てしまった。
起きたのは昼だった、クーラーのせいで、ぐっすり眠れた、部屋から出ると、ムッとした暑さに、トイレに行くだけで汗が出た。
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