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第二十一話 作品を作る
取りあえずは、夏休みの時に決めた、グループに分かれ、そこから三名ずつ組んで、最終的に二組。そして俺たち一年生六人は、フラワーアレンジメント自由を、菊池。生け花自由を豊田。アクアリュウム大を宮部、小を田中。盆栽の松を山田、自由課題を俺が受け持つことになった。
「うわー」
スマホが大音量で流れた、俺の好きなロック。
「なんだ?」
「すいませんオフにするの忘れてて、あれ?」
「どうした?」
「先生、じいちゃんから、電話くれって」
「俺に?」
うんと言って携帯を鳴らし先生に代わった。
電話の向こう、選考委員に選ばれたから家での作業はお断り、人の出入りがあるだけで、何言われるかわかんないから。
まあ言われてみればそのとおりだが・・・
ただ、約束は果たすと言っている、作業場からの資材の提供、材料なんかは好きに使っていいそうだ。
でも待てよ、どうやって持ってくる?
「どうする?」「行ってみることもできねえよな」
「誰か撮影してる」「木村にとらせりゃいいジャン」
「あ、そうか、彼は関係ないもんな、ごめん、お願いできる?」
「いいけど、持ってくるのは?」「あーそうか」
「そういえば、隣にお寺があったわよね」「二軒隣だけどな」
「借りられないか、交渉するは、車もなんとかしましょう」
そういうことで、俺たち園芸部は、大会に向け動き出した。
「ありがとうございました」「いやいや、こんなのでよければ、また使ってください」
「鉢なんかの提供ありがとうございました、感謝します」
「どうせ廃棄するんだ、行く当てができてよかったよ」
「忙しいのにありがとうございます」「頑張ってな」「はい」
お寺の住職からいろんなものをいただいたんだ、部長はホクホク顔だ。
携帯やパソコンで、作業場をうつしながら、必要なものにしるしをして、あとで、畑をしている山下さんたち、学生じゃない人たちに、寺に置いたトラックまで運び出したんだ。
既定の水槽なんかもあって、ただで借りれるのはありがたいと部長たちは喜んでいた。
買うものは、アクアリュウムの方は飾りと植物で結構持っていかれるから、お金はできるだけ使わないようにするんだそうだ。
そして、熊本の方は。
「対してないな」「熊本城に水前寺公園」「電車か」「天草って長崎じゃないんだ」
「誤解しそうだよな」「入り組んでるしな」
「でも海もいいよな」「熊本城は決定だな」「くまモンはやめよう」
「入れたいけどな」「やめた方が無難だろうな」
パソコンで検索、いったことのない景色はこのほうがいい。
「阿蘇山だな」「噴火してるとこか?」
「いいかも、紅葉だよな」「季節もあるからな、モミジあったかな」
「桜もいいですよ?」「枯葉だけ使うか」
案は山ほど出てくる、それを書き留める。
船越先輩は器用にパソコンを使い始めた。
「すごい、こんなことできるんだ」
「イラストを描くのとおんなじだよ」
すごいねとみんながのぞき込む。
俺も教わって入るがここまで使いこなせていない。
「どうだろうか?」
みんなが集まって覗き込んだ。
青い山並み、そこに、熊本城、周りは、紅葉。まるで、観光パンフレットのようだ。
「下は?」「やっぱり海かな」
「こんな感じかな」「天草の海?」
「あんまりだな、何もない方がいい、どうせ枯葉で埋めるんだ」
「じゃあ、こんな感じかな」
おーという声
「いいかも」「よし、プリントして、まだ決定じゃないけど、これに沿って行こう」
アクアリュウムの方も決定したようだ。
「では、秋の熊本城と、こっちは規定の人魚姫で行きます、明日もっと詰めていくから、各自、植物の案とか自分なりのイメージで作り上げてきて、以上、解散」
帰りに先輩に聞いた山はどうするか?
コケをボードに張り付けるんだそうだ、軽石を薄く切ったものを、板やハッポースチロールに張り付け、それにつけて定着させる、もうあるんだそうだ、それを切ればいい、あとは、紅葉させればいい。
「コケを紅葉させるんですか?」
「そう、赤くさせるんだ、まあ見とけって、楽しみ、楽しみ」
何するのかな、まあいいや、明日、明日。
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