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第三話 新しい父親
俺も来年は高校生だし。
初夏に訪れた珍客、いや、いや、新しい家族は、何も知らないチビが二人、俺たちの家族になった。
「エー、嫌だよ、マーと一緒なんて、受験だよ」
今だけだからそんなこと言わないでという母。温泉からの帰りはものすごいお土産を持ってきていた。
兄貴は家を出ようかと言い出した。何で兄貴がでて行くんだよ。
彼女も連れてこれねーだろという。まあ、そういう事かと思うが、何で?
マーは、弟が出来てうれしそうだ、みていてわかる。一番下の甘えっこが兄貴になるんだ、そりゃうれしいわな。
それに、このオヤジ、年を聞いて驚いた、めちゃくちゃ若い、まだ二十代だった。何で母ちゃん、こんな若いの捕まえた。三十八の母ちゃんに二十九になったばかり、いいのか?
「年なんか関係ないよ、俺は、悦ちゃんに惚れたんだ、それだけさ」
「いやーねー」
バンバン背中を叩く母ちゃん、二人照れてるし。
母ちゃん…あんたが照れてどうする。
でも実は、という落ちがあった。
「ハー?」俺は声を思い切り下からしゃくりあげる様に大きな声を出した。
もちろん兄貴も
「じゃあ、何、あの二人、正真正銘、俺たちの兄弟?」
「うん、そういう事」
「何で隠してたんだよ!」
俺は裏切られたような気がした。
母ちゃんも生むつもりはなかった、でも聿さんが、待つと言ってくれたんだそうだ、だから、二人の兄弟は、俺たちよりも、なんか腹立ってきた。
そう、七年前連れて来たのは彼だった。もうそんなこと忘れていた。
「太ってきてたのは、赤ちゃんがいたからか、よく、隠したな」
そうだ、でも何でもないようにしていた、入院?そんなのしてないよね?
「ごめんなさい」
「それで?」
「だからちゃんと結婚して籍を入れたかったの」
やられた、はめられたと思った。
兄貴は大きなため息をハーッと吐いた。
「今まで、俺たちが学費に困らなかったのは、聿さんのおかげ?」
「はい、そうです」
「あのさー」
「チー、もういい、わかった、俺、やっぱりここでて行くわ」
兄貴!
お兄ちゃん!
隠す必要がどこにあったんだという。そうだ何で隠してたんだ。
「そうか、わかった、七年前なら二十二才だ、叔父さん、学生だったの?」
おい、おい、雅弘君わかったようなことを言うんじゃないか。
「ごめんなさい、そうです」
ほんとかよ!
「聿さんの親には?」
「ちゃんと話してあります」
それじゃあ、学費なんか出してくれてたのはこの人の親?
そんな、寛大な親がいるのかよ?
「いるよ、ねー」
ねーじゃねえよ、まったく。
「それで、今まで俺たちほったらかしで、木村さんの家に行ってたのかよ」
それはないと言っていた、木村さんの祖父母がちゃんと面倒を見た、それと、俺たち三人は、家事を手伝ってくれたから、安心して仕事もできたし、二つの家を行き来できたという。
俺たち三人は大きなため息をついた。
母ちゃんの天然にもほどがある、この人が父親?もう何が何だか。
「それで、こんな狭いところに、木村さんたちが来るの?」
聿さん、引っ越しは?
「エーッとー、言いにくいんだけどー」
「まさか、俺たちが移るのか?」
うんと頷いた母。
「俺嫌だよ、もうすぐ終わるから、転校なんかしないよ」
そんなことしないという、ただ、今、リフォームをしているそうだ。
ハー?そんな金何処にあるんだよ!
心配しないでいいという。
どういうこと?
ただ今は、仕事が忙しくてそっちに気が回らないそうだ。だから、もう少しの間、ここに置いてほしいと聿さんが言う。兄貴にも、新居が嫌だったら出て行ってもいいといった、
兄貴には、迷惑をかけた、大学にも行きたかっただろうという。
「いや、俺、そんな頭よくなかったし」
「まだいいだろ、頼むよ、俺はみんなと一緒に居たいんだ」
このオヤジ、じゃねーや、んー、二十九じゃ、微妙だし。
夏休みが終わるまでにはリフォームは終わるそうだ、それまでよろしくと、三人は紙の上で俺たちの家族となった。
「狭い、狭い」
悪かったな狭くて。
そんな大きな家に住んでたの?
「うん、でっかいよ、爺ちゃんも、ばあちゃんも一緒に住んでたし」
はあ?祖父母と一緒?聞いてねえし。
今は?
「今は、エーッと、外国!」
「アメリカだよ、リフォームが終わったら帰ってくる」
なんか俺らと住む世界違わない?
何で、ここ日本だろ、同じだよと言う真、わかって言ってる?馬鹿にするなと行ってきた、可愛いジャン。
まあそうだけど、チーちゃん、何で、母ちゃん、内緒にしてたのかな?
「さあな、寝るぞ、明かり消すぞ!」
腹が立ってそんな返事しかできなかった。
四人で並んで寝た、真も怜も喜んだ、暑いけど楽しいという。
そうか?真夏だぞ、暑いんですけどー!
そして、親は忙しいと、外に出てばかり、俺とマーで、みんなの食事の支度。それでも、母ちゃんか聿さんはどちらか一人が遅くても帰って来ていた。
食べてはすぐにでて行く、夏休みが終わるまでには何とか区切りをつけたいそうなのだが、いいのかな、俺たちは慣れてるけど、こいつらは、まだどっちかいた方がいいんじゃねーのか?
「そっか、おじいちゃんとおばあちゃんがいたから寂しくなかったんだ」
「うん、それに、夏休みが終わるころにはみんながいるもん」
この二人はいい子だと俺は思う、何も隠し事はしないし。聞かれたことに、真はちゃんと答えてくれる。
一気に増えた兄弟、なんだかなー?
父ちゃんの両親はもういない、三年前、母ちゃんの母親、ばあちゃんが死んだ。その日まで、俺たちはいっぱいの人の応援でここまで大きくなったんだと思った。
去年、オヤジの十三回忌法要と一緒にばあちゃんの三回忌も済ませた。
ばあちゃんは知っていたのかと聞くと知っていたという、それならいいけど、あー騙された!
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