第二十二話 予選

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第二十二話 予選

手が上がった。 昨日帰ってから考えた、写真選考に出す作品は来週には出さなきゃいけない、でも、もし、それが通ったとして 「盆栽の方は、どうやって維持するんですか?」「おー、考えてなかった」 「紅葉なんか落ちたら終わりだぞ」「でも色の変化は関係ないだろう」 「そうね、でもうまい具合に赤い色に持っていける」「プロでもないのにむつかしいな」 「でも、寒暖の差で色がつくのなら、出来るだけ維持させることはできませんか?」 「そうなると、色が悪くなるんだ」「色が悪い?」 くすんだり、赤黒くなったり、葉が枯れたりする。 「むつかしいね」「そこも選考対象になるのかもね」 「とにかく、人工物は、建物の構造だけだから考えたほうがいいかもな」 「コケも、青い方のままがいいかもな」「下手に色はつけられないか」 「あの、昨日、色を付けるって言ってたんですけど、どうやるんですか?」 「焼くんだ、太陽の熱で」「枯らしちゃうの?」「その一歩手前でストップさせるんだ」 「むつかしそう」「こっちはもう少し考えよう」 植物が並べられ、だいたいの感じはつかめ始めて来た。 「個人も並行してやるわ、時間がないから、スケッチだけ出して」 俺は、今まで作ってきた盆栽の写真を出した。 「柳?」「桜だよ、こっちも桜」「咲いてる?」「うん、四季桜、もっと寒くなるといっぱい花をつける」「うわー、お前、それ、団体用、いいジャン、秋から冬で、部長変更、変更」 「あーあ、いいのかね、これ変わってるね、バラ?」「ボケの花だよ」 「バラ科なの?」「とげがあるからね」「すごいな」 集合、明日、もう一度詰めて検討、試作品を作る日曜日までには完成させ、来週は撮影して送る、ここまで、解散。 「なんかわくわくするね」「高校って楽しいね」 そうかな? 「じゃな。明日」「さよなら」「バーい」 車で帰っていく人たち、中学の時なんか、部活、真っ暗になるまでやってたけどな、まだ明るいし、なんかな、やっぱ金持ちの感覚はわかんねぇや。 そして、瞬く間に日は過ぎ、撮影したものがすべて大会本部へ送られた。 「うわー、へ、何これ、マジ」 俺今、じいちゃんに呼ばれ、あの倉庫にきています、大会本部に来た写真がすべて、今、目の前で、手作業ではられています。 ちょっと覗き見た、写真の裏には、学校名と住所が書かれている。沖縄だ、なんか興奮。 「さて、各支店へ送れたのかな?」 「はい、終了いたしました、一週間後集計できます」 「では、一般、学生もすべて見れますね、インターネットは」 「今、やっています、0時には一斉配信ができると企画からは連絡が入っております」 インターネットでも見れるのかよ。 「さて、こっちのお客さんの方はどうかね」 「明日には、皆様足を運んでいただけるそうでございます」 俺はいっぱい働いている人たちが、封筒から出したものをはっていく姿を見ていた、あそこに俺たちのもあるんだと思いながら。 「そうですか、千弘、チーちゃん」 「は、はい」 「お前なら、ここでお客をもてなすとしたらどんなことをしたい」 「倉庫でですか?」 「そうだ」 何にもないところだけど、写真はホワイトボードに貼ってるのを見るわけだから、みんながゆっくり見るのなら。ン―、ポンと手を叩いた。 「毛氈でも弾いて赤い傘でも刺すかな」 「ほう、お茶をたてるか」 「せっかく植物を見るんだ、演出だろ、休憩できるところがあってもいいだろ」 「下斗米、準備できるか?」 「はい、かしこまりました」 うっそ、やんのかよ。 「いい出来じゃな」と張り付けた写真を感心してみている爺ちゃん。 「千弘君も出したのかい?」スタッフさんに聞かれ返事はした、何を出したのと聞かれ、内緒にしておきます、うまい人多いんでというと、またまた、とか、謙虚だなと言われ、 「違います、落ちたら恥ずかしいんで、内緒の方がいいでしょ」 そういうと笑われてしまった。 「会長準備できます、夜半には搬入いたします」 「さよか、それでは、皆さんよろしくお願いします」 「お願いします」 俺の大きな声が倉庫に響いた。 いっぱい人がいたけれど、アルバイト?かと尋ねたら、数人だけであとは社員、本社と、近くの店の応援なんだそうだ。イベントをするのも大変だな。 「俺たちも来ていいの?」 「選考会?んー、終わったらすぐに片付けるから、店の方がいいかもな」 わかりましたと返事をしておいた、なんかドキドキするなー、じいちゃん教えてくれればいいのにな、なんて思いながら爺ちゃんの隣に座っていたんだ。 合否も明後日、新聞は一日遅れ、それと同時にインターネットで見ることができる。各店の方が早くわかるという。 「まさか、客寄せ?」 助手席に座る爺ちゃんの秘書の一人一番若い金子さんが答えた。 「正解、大きなイベントだろ、使わせていただきました」 「夏に呼ばれたのってこのこと?」 「そういうこと、ありがとな」 なんかいいように使われたような気がする。 土曜日、発表は各店舗一斉に十時と聞いていた。俺たちは先輩たちと、待ち合わせをしてカリオンの入り口にいた、続々と集まってくる人達、あちこちで団子になっているのはみんな高校生なんだなと思ってみていた。 「なんかドキドキするな」 「団体だけでも通ってますように」 「なんか試験の合格発表みたいでドキドキする」 もうみんな緊張、自分たちだけじゃない、ほかの学校のも見られるんだ。明日はパソコンで、全国の合格者たちのを検討することになってるんだ。 「出てる、小さいな」「探して?」 キャーとか、歓声が上がっている。 「まじかよ」「通ってますように!」 「団体、あった!」 団体戦は学校名が上がっているんだ。 やった-!と大興奮。 「個人は。個人!」 「・・・まじかよ」 「どうしたの?」 「全部・・・通ったんじゃね?」 「噓!キャー、快挙よ!快挙!」 作品を見に行こうという事になった、写真にしるしがついているのがわかる。
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