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第八話 決められた未来
食事が終わった後、母さんに呼ばれた、おじいさんの部屋へ行こうと。
「何?」
「進路のお話」
「進路?俺、兄貴とおんなじ桜台高校でいいよ」
「うん、私もそれでいいって言ったんだけどね?」
まあ入りましょうと、この間、兄貴と言い争いをした部屋に入った、そこには聿さんもいて、テーブルの上には、明らかに、私立高校だとわかるパンフレットが置かれていた。
そこで聞かされたのは、俺は、企業の息子ということで、どこでどんなことが起きるかも
しれないから、私立に入ってほしいということだった。
「そんなんで俺の将来決めないでください!」
「聞いてほしい」
犯罪、それと、企業同士の争いに巻き込まれる。
「どういうことですか?」犯罪は分かるような気がするけど…。
「話は早い、聞いてくれ」
聿さんは、高校時代から、女の人がわざと近づいてきては関係をねだってきたそうだ。もし、間違いを起こしたとして、男だから、責任問題だなんだで大変なことが起きる。
起きてからでは遅いんだ、君も早くお母さんのような人と出会えればいい、俺はラッキーだったんだ。だから、私立だと、中で守ってくれる。公立だとうまくいかなところもあるからね。そんなもんか?
兄貴は恋人がいるから狙われるのは俺だと言うんだけど・・・
「でも俺・・・」
「頼む、身の安全の確保のためなんだ、お願いできないか?」
兄貴の時思った、俺にも来た、この先俺はどうなるんだろう?
十月に入り、少し肌寒くなってくると兄貴は、今まで道理、変わらず仕事に行き定時で帰ってきていた。週末出張なんだそうだ。
出張?どこ行くの?
名古屋に行き、それから大阪に行って来るんだそうだ。
それって、爺ちゃんの話と関係があるのと聞いたらあるんだって。今はやりがいを感じているんだって。
「何か変わったの?」
兄貴は、今まで、疑問に思っていたことなんかを上の人に話しても、毎日変わらない仕事を淡々とこなすだけで、別になんにも感じないし、言われたことだけをこなしていればいい。
上にたてつくことをしなければ定年まで働けると言っていた周りの人たち。でもそこから一歩出ることで、今までは会社の中でしか知らなかったことが、ほかの会社ではこうしてるんだという交流会のようなことに参加させてもらっているだけで、周りの人の感じ方が少し変わったという、意識改革のような事を俺がしているんだと思ったらそれが面白くてたまらないと兄貴は言った。
仕事、きついんじゃないの?
「きついよ、でも、俺、すげー楽しいんだ」
なんか兄貴のきらきらした目は初めて見るかもしれない。あんなに嫌がっていた肩書も、スーツも。なんか楽しんでると変わるんだな?
一応、兄貴にも私立の話をした。
「そうか、いろいろ考えてくれるんだな、俺、聿さんに、すまなかったって頭下げてもらった」
「俺も、聿さんは、母さんと出会えてラッキーだったんだって、だから、いろんなことに巻き込まれる前に手を打っておきたいっていうのが本音なんだろうな」
「お前も賢くなったな」
「でも、やっぱり、怖いや」
「でも、それを跳ね飛ばしていかなきゃいけない運命に俺たちはあるのかもな」
そうなのかも知れない。けれど、嫌だ、とどこかで叫んでいる俺がいる。
「兄貴、彼女は?」
ん?んー・・・
「別れたの?」
別れてない、でもなー、この先のことを真剣に考え始めたんだ、とごろんと床に寝転んだ。
今までも考えてたんじゃないの?俺もその隣に寝た。
自分が今まで考えたことと違うことが起きている、まだだけど、年が明ければ、兄貴は社長になる、小さい会社だけど、責任が生まれる、そこに彼女を巻き込んでいいものかどうか悩んでいるという。
「話はした?」
「まだなんだ」
「プロポーズも考えなきゃね」
「そうだよなー」
決断するのは兄ちゃんだもんな、男ばっかりだからな、俺は嬉しいけど、尚ちゃんの料理うまいし、俺は起き上がり、部屋を出ながらそう言った。
「流れには逆らえないよな」
後ろでそう聞こえたような気がしてドアを閉めた。
それなら、それに乗ってみることも挑戦かもしれない。
俺は、腹を決めた。
私立に行く。
俺は、俺の・・・やってやろうじゃねえか、よし!
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