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私はハンカチを取り出し、片方づつ蓮太の頬を拭う。のけぞるようにビクッと震えて、それでも大人しく拭かれてくれて、少し笑けた。
「いっぱい考えてくれて、ほんとにありがとう。
……でもね、私は今でも、そしてこれからもやっぱり、この検証癖はなくならないと思う。我慢できないの。どうしても、自分で確かめたいことは、ちゃんと検証したくなっちゃうと思う」
「いいんじゃないかな。それが、相葉アイだ」
「蓮太にもきっと迷惑をかけてしまう」
「平気だよ。いつまでも一緒ににいるなら、それは当たり前の事になる。どんどん迷惑かけろ。ずっと友達なんだから」
「……そっか」
二人で並んで、並木道をゆっくり進む。
天気予報通り風も弱くて、太陽は少しづつ熱を帯びてくる。
歩きながら蓮太が鞄からスポーツドリンクを一本取り出し、「昨日当たったやつ」と笑ってそれを飲んだ。
当たりに焦ってボタンを押した蓮太を思い出して、私はまた自然と笑えて、蓮太はそんな私を見て少し驚く。
「笑ってるアイも、久しぶりでいいな」
◇
校門が見えてきた。
今日の担当の先生は、英語の三村先生のようだ。
ゆっくり二人で歩いてきたから、遅刻ギリギリの時間になってしまっていた。充分に間に合う距離だが、今朝はこの並木道がなんだか愛おしい。
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