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沈黙が生まれた。
まるで私が空気読めてないみたいになってるけど、ちょっと待て。
そもそも勉強教えてほしいなんて、私はひとことも言ってないのだ。
「……あー、えーっとさ、アイちゃん?」
「はい」
「……アイ。今まで通りじゃ点数上がらないんだって」
「それで?」
「アイちゃん、今まではギリギリ大丈夫だったかもしんないけどさ、いつか本当に赤点とっちゃうよ?」
「たぶん大丈夫、だと思います」
「……」
呆気にとられる、を見事に具現化してしまう。引き攣ったような笑顔で固まった男子二人の様子を見てから、私は恐るおそる聞いてみた。
「あのー、お昼のパン買いに行ってもいいですか?」
「ちょ、ちょっと待ってアイちゃん」
真中くんが我に返った。立ち上がろうとした私の両肩を抑え、席に座らせる。
「話を変えよう。テスト勉強を一緒にするのは諦める。だけどさ」
蓮太の方に顔を向けて、不敵に話し始めた。
身構える蓮太を見上げる角度を緩くさせながら、真中くんのスイッチが入った音が聞こえた。
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