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◇
深夜1時。
今日はまだ寝ていない。
テストが終わるまでは、この生活は続く。
窓の外を見る。
蓮太の部屋は、今日も煌々とデスクライトが灯っていた。
ひとりだけど、ひとりきりじゃない。
「蓮太くん、アイがひとりの時は、きみとふたりになってもらえるかな?」
幼稚園への登園を嫌がり泣いている私を抱えたお母さんが、園庭で不思議そうに首を傾げているちっちゃい蓮太にそう頼んでいた。
蓮太は「……分かった!」と答えて、恐るおそる私の手を取り、「アイちゃん、行こう!」とブランコへ引っ張っていく。私はお母さんから引き剝がされる痛みを少しだけ感じてちょっと泣きそうになって。
でも、蓮太が繋いでくれた手があたたかくてちっちゃくてかわいくて、それで私は蓮太についていった。
幼稚園にはお母さんがいないけど?
ううん。蓮太がいてくれるから、大丈夫。
お母さんが言う蓮太がいるなら、大丈夫。
昔の風景が浮かんだ勝手な過去のモノローグは、蓮太の部屋の電気が消えると同時に真夜中へ消えた。
蓮太の今日のテスト勉強はおしまい。
眠くなったんだね。
蓮太、今日もいちにちお疲れ様。
テスト、頑張ろうね。
私はもうひと踏ん張り。
再び開いた机の上の教科書から、徳川慶喜とか坂本龍馬が飛び出てくる。格好付けた木戸孝允を指でつまんで、私は知識のお夜食にした。
◇
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