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 私に話し掛ける男子生徒、約一名。いつものあいつ。幼馴染み。統計的に客観視して見れば、たぶんイケメンの部類。教室に残っている女子が少なからずこっちを見てる。仮説どころか、これでは定義そのものが崩れる。 「……あんぱん、買えなかった」 「買いにも行ってないのに?」  教室の座席で言うと対角線の一番遠くから来て、どうしてそんなことを聞きに来るのか。座席の距離感と私への観察力が、見事に反比例している。 「授業、長引いたじゃん。だから買えないよ」 「分かんないよ。今日はまだ売ってるかも」  表情を変えずに答えたのに、蓮太は表情をいちばんの笑顔に変えて幼馴染みの腕を掴む。 「いい。あんぱんはきっと無い」 「いいから。あるかもしんない」 「蓮太ひとりで行ってきなよ。私はいい」  じっと蓮太の顔を見ながら、答えを重ねる。誰のせいであんぱんを諦めたのか、と、それは言わない。伝わったのか伝わらないか、蓮太は私の腕を離して顔を少し曇らせながら「わかった」と言って廊下へ出て行った。
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