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 ぽつねん。  でも、蓮太が居なくなった私の方向には、クラスの女子達の視線だけが残る。嫉妬とか敵意とか、そういう灰色っぽい感情を孕んだものをこめかみのあたりに浴びる。あーあ、悪目立ちが過ぎる。  クラスの王子が謎に構う地味な女を、女子は視線とコソコソ話で殴り付ける。んー。私はまだこの時間の最適解は見出せていない。私は何もしてないし、蓮太が悪い訳じゃない。家が隣同士で、たまたま長い付き合いの幼馴染みを気に掛けてくれてるだけ。たぶん。  もう。点Pが不安定で、検証ができない。  いじめられるわけでもないし、私は気にしてない「てい」で文庫本を読み続ける。 「……出たよ相葉アイ。スカしちゃって」 「あいつ、和田蓮太の何なの?」 「幼馴染みらしいけど、なんか怖いよね」 「蓮太くんと釣り合わなーい。ムカつくよな」  はいはい。  充分過ぎるくらいに耳に入る雑言は、明確に目的を持っている。矢印の方向は、巡り巡って私だ。
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