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「さ、先に行けと言っていなかったか!?」
そんな気配もなかったのに、一体いつの間に現れたんだ。
動揺しながら背後に退くと、相手が追うように迫って来る。
「……先に行けとは言ったが、後で入るとは言ってない」
逃げる内に風呂の向こう岸の壁に背中が付いた。
「でも、男同士で一緒に入っている所を万が一人に見られたら」
せめて視線を逸らし、背を向けた。
「……主人の湯浴みを使用人が手伝うのは、この国でも珍しくない」
言い切って、オルファンは湯の中に肩を沈め、俺のすぐ背後まで寄ってきた。
背筋を丸めていると、彼の指が頭の後ろの髪に触れてくる。
ぐいと毛先を掴まれて首が後ろにのけぞり、姿勢が不安定になった。
「やめろ、何する」
「洗うんだよ。その方が従者としては『自然』だろ」
強引な口調で言われて、仕方なくそのまま後ろに倒れ、彼の胸に頭を預ける形になった。
長い指が差し込まれ、地肌から髪を梳いてゆく。
くすぐったくて、気持ちいい……。
「……あんたのこの金髪は、子供の頃とちっとも変わらないな。細くて柔らかくて、すぐに絡まる……」
甘く低い声が耳元で囁く。
その近さに息が震えた。
「肌も、白くて柔らかいままだ。……あの頃のあんたは社交界で有名な美少年だったよな」
指が下りてきて、滑るように首筋を、肩をたどり、胸に触れてくる。
「ン……、あ……っ、……知らない、そんなこと……っ」
「今も昔も、あんたは自分の容姿にこれっぽっちも興味がねえんだな。……俺は、あんたに似ていたからあの金髪の尻軽女を抱いたのに」
「……?」
尻軽女……?
誰の事だ。
まさか、叔母のことか……?
俺に、似てたから……?
「それって……どういうことだ」
尋ねた途端、ぎゅっと強く乳首を摘ままれて、震えで湯が波立った。
「いっ……」
「……俺をペットの犬みたいな扱いをするあんたを、汚してやりたかったからに決まってるだろ」
その言葉を聞いた途端、胸を締め付けられるような感情が湧き上がって、密かに涙があふれた。
オルファンは、叔母が好きで抱いた訳ではなかったのだろうとは、思っていたけれど……。
もしもその理由に少しでも俺の存在があるなら……そこに好意がなくても、堪らなく嬉しい……。
熱っぽい気持ちを噛み締めていると、敏感になった二つの突起を指先で弾かれて、下腹部がキュンとうねった。
「あ……っ、やめ……っ」
「やめろって? ……さっきまで、発情期の犬みたいに息荒くして抱けって迫ってたのはアンタだろうが」
言われて、そういえばそうだったと思い出した。
今の俺は……オルファンにとってはどんな存在なのだろう。
彼の望み通りに汚れたということなんだろうか。
この先ももっともっと堕ちて、溺れても……いいんだろうか……。
無防備に体を預け、力の抜けた両腿を開いていく。
肌を伝い下りた長い指が、オルファン以外には誰にも触れられたくない場所に忍び込んでいって、興奮ですっかり濡れそぼった襞の間をねっとりと擽られた。
「あ……はァ……ッ」
「湯の中だってのに、ヌルヌルだな……」
指が中を開いて、確かめるように探られ、奥がヒクヒクと疼く。
「だ、って……我慢、できない……あ!」
一番感じやすい部分にも別の手の指先が触れてきて、思わず膝が閉じた。
「ク、ぅ……っ」
「こっちもチンポみたいに勃起させて、そんなに期待してたのか……? 気位の高い貴族のお姫様だったあんたが」
「……っ、俺はっ、最初からそんな人間じゃない……っ」
「……そう言うなら、足でも開いて雌犬らしく俺を誘え」
「……っ」
俺は歯を食いしばり、オルファンの両腕を強くつかんでどけた。
柔らかな肉の狭間から指が抜け、自由になった体の上半分をざばりと水面から出し、湯の中に立ち上がってぐいと振り向く。
「……」
無言で俺を見上げた精悍な黒い瞳の前で、俺はすぐ後ろの大理石の風呂の縁に腰かけた。
――こんな明るい場所で、死ぬほど恥ずかしい。
でも……。
羞恥に涙ぐみながら、彼に向かい、自分の両膝をゆっくりと開いてみせた。
「……俺は……ずっと前から、もう汚れてる。ここが、こんなことになる、ずっと前から……っ、お前が好きでっ、ずっと……抱いてほしくて、欲情して……。俺のこの……汚れているところを……もっと、お前に……見てほしい……っ」
告白が終わる前に、オルファンは長い髪を湯に揺らめかせ、吸い寄せられるように俺の両脚の間に入り込んでいた。
ハッとして両足を閉じようとしたけれど、それはがっちりと両手で膝を掴んで抑え込まれて――。
次の瞬間には、彼の綺麗な形の唇が、まるで口づけするように優しく――硬く浅ましく張り出した俺の花芯を包み込んで吸い立てていた。
「……んァっ……! それ、だめ、だ、ア、ア、はぁ……っ、」
一番感じやすい部分に直に伝わる男の舌と唇の淫らな熱感。
頭が真っ白になって、空気が震えるほどはしたなく高い甘い喘ぎと、腰の痙攣が止まらなくなった。
強く根元から吸われ、舌でなぶるように前後に責められ、叫んでしまいそうな程の快楽が走り、涙が勝手にあふれる。
「も、吸わな……気持ちいい、オルファンっ、いくっ、や、イ……っ」
あっという間に絶頂しかけると、それを見越したように唇が下にずれ、快楽の頂点が遠のいた。
少し安堵した途端、今度は唇が、肉襞の間に溢れた淫らな体液を水音を立ててすすり始める。
「ああっ、……何して、オルファ……やめろ、汚いから……っ!」
舌で責められたことはあっても、唇を付けて飲まれるなんて……、こんな恥ずかしい事は今までされたことがない。
慌てふためく俺の脚の間で、オルファンは端正な顔を上げ、粘ついた液で濡れた唇を引いて笑った。
「……汚れた場所も、全部見せてくれるんだろう。もっと脚を持ち上げろ」
「そ、それとこれとは……っ、っひぃ……っ!」
オルファンが俺の両足首を掴み、細い鼻梁が、さらに俺の深い部分を探るように尻の間に触れる。
熱いざらついた舌が、糸を引くほど溢れた淫液の零れ落ちた先――尻の穴にまで触れてきて、一瞬息ができなくなった。
「だめだ、やめてくれっ、それは……っ!」
チロチロと襞が擽られ、やがて、チュクと音を立てて一瞬で体内に深く舌先を突きこまれる。
とんでもない場所を拡げられた感覚……体を変えられる前から密かに望んでいた欲望。
それをこんな形で叶えられた罪悪感と堪らない陶酔感が、ひとたまりもなく腹にせりあがる。
「恥ずかしい、から……っ、いやだ、そこで……イキたくな……うンン……っ!」
けれど、絶頂の波は止めようもなく――。
俺はオルファンの舌をそこに受け入れたままビクッ、ビクッと締め上げ、一番恥ずかしい場所を暴かれた衝撃のままイキ果てていた。
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