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光る珠へと姿を変えた人たちが消えてなくなって、改めて辺りを見てみると自分の他にもまばらではあるが人がいる事に気が付いた。
俺同様呆然と立ち尽くしたままだったり、せっせと石を積んでいたり。
石を積む。――賽の河原か……? 賽の河原で石を積むのは子どもだったはず。親孝行もせず先立ち、両親を悲しませた事が罪となるのだ。
だけど俺や周りにいる人も子どもではない。悲しませるはずの両親も生きてはいないし、ここは本来の賽の河原とは違うのかもしれない、とぼんやりと思った。
積み上げた石の塔を壊す獄卒もおらず、無数に転がる石の中から何かを探してそれを積んでいるのだ。
俺はそれを見て思った。みんなが必死になって積んでいるのは『想い』ではないのか。自分を想う現世に残る人の『想い』が石となり輝いて見えるのではないか。無数にあると思える石の中から自分への想いだけを探し出し積むのだ。
そうする事にどんな意味があるのかは分からなかったが、俺も光る石を探し出し積む事にした。虹色に輝く丸く小さな石だ。
時間という感覚が意味を成さないだろうこの場でこんな事を思うのも変な話かもしれないが、俺は来る日も来る日も石を積み続けた。セイの想いを探し、集め、そして積む。
最初はセイの他にも親戚や友人のものもあるのかもしれないと思ったが、すぐに違うと思った。これらは全部セイの俺への想いだ。
申し訳なさと愛しさと、胸の痛みを抱えながら石を探した。
*****
ある日、他とは明らかに毛色の違う――子どもが目の前に立って俺の事を見つめてきた。十歳くらいの会った事はないはずなのにどこか懐かしいような、不思議な雰囲気の少年だった。
一瞬迷子か? と思ったが、こんな場所でそんな事を訊くのはばかげていると思い直した。
「――何か用かな?」
できるだけ怖がらせないように優しく微笑みながらそう訊ねたが、少年はにこりともせずギロリと俺の事を睨んできた。
「――えっと……?」
「――お前はまだ信じてるんだな。可哀そうなこった」
可哀そうと言いながら少しもそうは思っていないような口ぶりで、少年はバカにしたように鼻を鳴らした。
「それは……どういう意味?」
「どうもこうもない。そのまんまの意味だ」
「そのまんまって……。俺は別に可哀そうじゃないよ。俺よりセイの方がよっぽど――」
最後まで言う事はできずに俺は俯いた。
残す人間より残されて、俺がいない世界で生きていかなくてはいけないセイの方が何倍も可哀そうなのだ。そうと知りながら俺はセイの事を縛ってしまった。そんなやつが可哀そうだなんてあり得ない……。
「ばぁあか。あいつは幸せにやってる。お前が死んでそりゃ最初は悲しんでたけど、今は幸せなんだ。だからあいつを想って泣く事なんてない。お前もさっさとその川に入ってしまえばいいんだ」
ぶっきらぼうにそう言う少年。この少年の事を俺は何も知らないけれど、少年の方は俺とセイの事を知っているようだった。
俺は少年の言葉に自然と笑みが零れた。
「よかった」
俺の心からの言葉だ。セイが幸せなら何でもいい。
勿論この少年が言う事が本当の事だなんて保証はどこにもない。だけど、少年の「今は幸せなんだ」という言葉にホッとしてしまった。願っていた事だったし、この少年は下手な慰めなんて口にしないと思えたからだ。
何故か俺はこの初めて会う少年の事を信じられると思ったのだ。
少年は一瞬眉間に皺を寄せキュッと唇を引き結んだ。そして何かを言いたそうにしていたが、何も言わずにその場から立ち去った。
呼び止めようとも思ったが、そうはしなかった。またすぐに会える気がしたからだ。
少年が去った後も俺はセイの想いを探し積んでいった。
それが俺の幸せ。
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