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3
そんな日が続いて、俺の周りにいた人たちはもう殆ど残っていない事に気づいた。
あんなに必死に石を積んでいたのにどうして――?
ふと人の気配がして、顔を上げるとあの少年が立っていた。
「まぁしょうがねぇよな。気づいてるかもだけどお前たちが必死になって探して積んでいる石は生きている人間のこちらに来てしまった人間への想いだ。自分への想いだけが光って見える。それを探して積む事でまだ自分は想われているのだと安心し、想いを自分に繋ごうとするんだ」
その後に続く「強欲で傲慢で、本当に嫌になる――」という少年の言葉はあまりに小さすぎて俺の耳には届かなかった。
やっぱり、と思った。最初に光る石を見つけた時胸に温かいものが広がって、それはセイの想いだと思った。セイを腕の中に抱いていた時に感じた温もりと同じだったからだ。
『幸せ』『愛してる』
俺もセイに探して欲しいと『石』を残してきたのだ。そんな事をしてしまったのだからもっともっと探さなくては。探して集めて、いつかセイに「ほらこんなに集めたんだ」って笑って自慢したい。そうしたらひどい事をしてしまった事を許してくれるかな……?
そこで、あれ? と思う。他の人たちだってあんなに必死に自分への想いを集めていたはずなのに――どうして止めたんだ?
その答えを発したのは少年だった。
「諦めたのさ」
「諦め……た?」
「あぁ、いや正確に言うと諦めざるを得なかった、かな」
「それはどういう――」
「――あんま教えるのはよくねぇけど、特別に教えてやるよ」
何を言われるのか、緊張でごくりと喉が鳴る。
「あの石は『想い』だって言っただろ? って事は想いがなくなる、或いは一番大事な想いを寄せる相手が別にできてしまったらどうなると思う?」
「――石が……無くなる?」
「そうだ。最初はどんなに沢山あった石でもどんどん数は減っていって、いずれは無くなってしまう。探しても探しても見つからないんだ。そりゃそうだよな、想いが無くなったんだからあるわけがない。もしも無くならなかったとしても毎日ひとつふたつの石を必死に探して積む事にどんな意味がある? その事に気づいたやつらが川に入って珠となって来世へと旅立つ――捨てられてしまう前に捨てるのさ」
ふんっと意地悪く笑う少年。
「なるほど」
まぁだからと言って俺には関係ないな。たとえこの先光る石を見つけられなくなったとしても俺が積んだ石は残るんだろうし――あ!
「これは残るんだよね?!」
ここに来て一番焦ったかもしれない。俺はセイの想いをたとえ過去の物だとしても失くしたくはなかった。この想いの傍にいるだけで俺はとても幸せだったから。
俺の勢いに押されて目を白黒させていた少年だけど、ちゃんと答えてくれた。
「――の、残る。消えたりはしない――けど、今はそう言っていてもいざ新しい石がひとつも見つけられなくなったら積み上げたものを壊して欲しいと言ってくるやつがほとんどだ」
少年は「お前はそうならないといいがな」とだけ言い残して姿を消した。
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