第二十七話 貧乏園芸部の成果

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第二十七話 貧乏園芸部の成果

二日後、生徒会室には次々と荷物が運ばれ、あのでっかいモミの木が運ばれてきた。 「つかい回しか?」 「まさか?」 「去年のはどうしたんですか?」「さあ?園芸部がいつも使うけど」 「あ、ち―?これ使い終ったらどうするんだ?」 「文化祭に燃やす」「マジで、取っとくのか?」 「うん、去年、俺たちチェーンソウで切らしてもらったもんな」「なー」 「ほら、喋ってないで手を動かす」「ほら、飾り」「花江―どうだ?」 「飾り左に偏ってる、右にもっと飾れ」 「まったく、見てるだけじゃねえか」「こっちは体力消耗するよ」 オー、いいんじゃないかという三年生。使いまわしの物をうまく使って、行かないといけない。 講堂の前に置かれたモミの木の飾りつけが終わると、ライトアップ用のライトも置かれる。 「そろそろ、床にカーペット貼ります」 「お願いします」 土足で上がるため、カーペットを講堂いっぱいに敷き詰める。 ホテル関係者も調理場なんかを見て行かれた。 そこでも名刺交換。 「カリオン、そうですか、木村会長はお元気になられましたか?」 「はい、ありがとう存じます、体は回復しておりますが、まだ、復帰はさせておりません、したくてうずうずしているようですが」 「そうですか、それはよかった、では、22日と当日、よろしくお願いいたします」 次は、近藤先輩と花江が頼んだ、パーティーなんか専門にやってくれる会社。 「え?社長代理?本当ですか?」「ええ」 何かこそこそと話す企画会社。若いスタッフばかり。女性が名刺を出しながら俺にこういった。 「実は相談がございます」 社長と書かれた名刺をいただいた。 去年まで担当していたホテルのお土産、ワインとケーキ。でも学生もいるわけだから、そこはわけた方がいいのではないかということになり、ホテル側は、大人のお土産ということで、ワインと、チーズ、それと小さなケーキを用意してくれるそうだ。 それは写真で見て知っている。 そして俺たち学生は、家に帰って、家族で楽しめるものをということで、大きめのケーキを企画した。 「ええ、それでオッケーを出したはずです」 「それがですね」 ケーキ用のイチゴが高騰、その代りのフルーツをと思っていたが、ホテル側に、それを集めるのも仕事ではないかと先ほどしかられたという。 「それでも、少ないんです」〈一応、他の妥協案も出しました、見ていただけませんか〉 先輩たち、みんなに加わってもらった。 「それでも、必要なのか?」 俺はさっきいただいた名刺に連絡、ホテルのシェフにどんな苺がいいのか聞いてみた、アジ、匂い、風味、大きさ。品種は関係ないと言われた、ただ。 「ただ?」 「国産に限ります」 「国産でしたら、何でもかまいませんね」 「はい、ただ、味見はさせてくださいとはいってあります」 みんなが俺の方を見てる。 「はい、わかりました、ありがとうございます」と電話を切った。 どれくらいの量いりますか? 「四パック入りで、二百、21日までにと言われております」 すぐだな…腕組みをして考えた。 俺は青果担当者に電話。 「あのさ、奈良県のイチゴ農家さんで、試験的に作ってる品種があったでしょ、教えてほしいんだけど」 俺はすぐそこに電話しようとしてやめた。 「千弘、どうした?」 「豊田、確か俺らも作ってたよな」 「エー、ジャムようだろ、いやだよ―怒られる」 「でもさー味はいいじゃん」 「すっぱいぞ」 「それがいいんだ」 「明日、朝一で、ここへ行ってください、先ずは味を見てもらわなきゃ、それでオッケーをもらったら交渉してください、絶対にもらえます、自身があります、あ、それと、俺、隣行ってきます、少し時間下さい、社長さん、今いいですか?」 「え、は、はい」 「先輩、隣の畑行ってきます」 「千弘、今の時間、ハウスだ」 「そうか、こっちです」 「は、はい」 俺は、園芸部で、農家の手伝いもさせてもらっていることを話した。駐車場を抜けた。 「うわー」 「すごいでしょ、こっちです」 「は、はい」 息を切らしながら走った、花のいいにおいに包まれるハウスの戸を開けた。 「玄さん!何処にいますか!」 おー、こっちだ。 俺は、訳を話し、今年、イチゴが高騰していることと材料が足りないことを話した。 「ジャム用のでいいんだ、味はいいんだ少し分けてくれませんか」 「いいけど、取るんがな」 「取るのは俺たちでします」 二つ隣のハウスを開けた。 「ウワー、これ」 「いいでしょ、俺たちのイチゴ」 「ひとつよろしいでしょうか?」 「いいぞ」 「木村さん、これいいです、それより、野菜使わせてください、凄いです」 出荷分もある、野菜はうちの会社で取引してるからそっちから買ってほしい。 「私、今すぐシェフを呼んできます、まだそんな遠くには行ってないと、もしもし、先ほどの竹田です、学園へお戻り願えませんか、それを承知で、よろしくお願いいたします、駐車場でお待ちしております」 よかった、五分前に出られたんですぐ引き返してくれる。と嬉しそう、それじゃあ駐車場へ、玄さんには、すぐ戻って来るので、ここに居てほしいと頼んだ。 社員たちも豊田に案内され集まった。 さっきの人たちが車から降りてくる、その人たちに説明しながら畑を案内 「こちらです、どうぞ」 おー、という声が上がった、でも食べてもらわなきゃ、こればっかりは。 皆さんが一つ取り上げた。 「うん、行ける」 「酸味はいい、小粒だが上等」 「でも、飾り用には」 「いや、いけるんじゃないか?」シェフは言う。 社長に、デザインの変更をしている。 「木村君、学校のイチゴとして、ちゃんと名前を付けよう、その方がずっと価値が上がる」 ありがとうございます。 今から取り始め、あまり寒くない冷蔵庫で保存してくれと言われ、玄さんが、野菜の貯蔵庫を案内してくれた。 「すごい、宝の山だ」 「へへへ、なんかうれしいな豊田」 「作った甲斐があったな千弘、プロに褒められた」 部長に連絡、すぐに行くと言ってくれ、交渉、玄さんにも頼み、三日後の料理の野菜は、うちの学校の野菜を使うことが決まったんだ。 「そうですか、カリオンの本店で」 「はい、若い農家さんの新作野菜が置かれています、伝統的な物もですが」 「伝統野菜ですか」 「希少な物ですが、譲って下さるのを、大事に扱わせていただいてます、お正月も近いですしね」 「それはすごい、ぜひ行ってみないと」〈お待ちしてます〉 なんて、よかった~、それでも、大粒の物もほしいということで急きょ、本店に行ってもらい試食用として見ていただいた。数時間後には今晩のうちに奈良に向かいますと連絡が入ったんだ。
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