第一話 桃の節句

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もっと奥に行けば、生徒会室か、なんだかこの通りだけ別の世界だな? 両脇にあるのは先生方の個室?だろうか、各教科で別れた部屋が続いていく、職員室もあるけどね。ここは大学生なんかも出入りしているから、ドアが開くたび、コーヒーのいい香りが漂ってくる。 「まじ?」 「ちゃんとしたお茶室だわ」 「すごいね」 部屋の中に石!ウワー、なんだ、部屋の中に家がある!大きな石の上を歩き家のような建物の扉を開けた。 カラカラカラ。 おじゃましまーす。 畳の匂いがする。 「失礼します、あれ?誰もいないのかな」 「置いて行く?」 「いいんじゃね」 カタンと音がした。 見たいという菊池が小さな窓、躙り口と言うところをそっと開けた。俺たちのその後ろからのぞいた。口に手を当て、驚いたように中を見てるように見えた。 目線が奥に行く、俺は菊池の目に手を当て、そのままバック。 「チー」 「しっ、豊田行こう、女子は下がれ、田中、田中!」 ニヤニヤしながら覗くし、彼女は動けないでいた。 「見ないほうがいい」 俺はみんなの背中を押し、豊田は田中のジャージを引っ張り部屋から出た。 「あいつ、まったく、気が付いてないのかよ、大丈夫か?」 コク、コクと腕の中でうなずく彼女を引っ張り出し、廊下へ出た。 「何してたの?」 「まったく、やってんだよ」 「目の毒だ」 中で、男性の上に女性がのっかっていた。それだけでわかるだろ? 「菊池大丈夫か?」 「うん、びっくりしたー」 「よかった、泣くような奴じゃなくて」 「もう、やめてほしいよ、学校だよ」 「行こう、もういやだ」 田中には見過ぎと言ったらみられるのが好きなんだろうだって、そしたら菊池に叩かれてた。 「行こう、行こう」 俺と、豊田は、こういうことかと思ってしまった、中にいたのは晴彦、女は教師か、秘書か、そんなところだろう、お前ら、ツイッターなんかに書き込むんじゃねえぞと口止めはしたものの。どこでどう、知られることやら。 そう、兄貴と聿さんは本家にあいさつに行ってきたのだ。彼は三男、上には兄と姉がいる。だからかどうでもいいとこがあるようだ、大学もぎりぎりで、お家柄は二の次、金も使いたい放題、だが、頭は切れるらしく、自分で仕事はしているらしい、水商売的な。 名刺をもらってきたそうだ、新宿で、ホストクラブとホステスのクラブを持っているらしい。 女遊びがひどくて、手を焼いているのも事実、だから聿さんには、上の二人はいいが彼には近づかないほうがいいと言われたそうだ。それを俺は、林と豊田にも話しておいたんだ。 だけど、こんなところでやってるなんて思いもしなかった。 「なあ、お前DT?」豊田に聞かれた。 「当たり前だろ、お前は?」 俺もだというだけど、あんなところでよく冷静でいられたなと言われた。まあ、免疫はついてるしな、というとへーと言っていた。まあそれは内緒という事で。 教室に入ると早速“先輩聞いて”と走っていきやがった、まあ仕方がねえか。 「豊田、木村、生徒会がお呼びだ、来てくれってさ」 「まさか、今の事かな」 「さあな、いいんじゃね、知らねえで」 部屋には、健と林がもう来ていた。俺たちの前に、紅茶が出て来た。 そこには、魅録さんと、女子が二人、それと男子が二人いた。 「忙しいところすまない、四月に入ると総会をすぐに開く、二年と三年だけだ、そこで君たちには、新生徒会として卒業生たちから任命を受けてもらう」 「日にちは、三月十日、卒業式の予行練習後、講堂で行います」 「それと、卒業式後は、部活へは行きにくくなるから、各部長へはわたくしどもから連絡を入れておくわ」 魅録さんは、顎で合図をすると、一人の男性と女性が残っただけで、あとはいなくなった。 三人が俺たちの前に座った。 「私は、千弘君から聞いて知っているだろうから二人を紹介するよ」 女性の方から。川島南さん、弁護士会会長の孫、家族、親戚全てが、弁護士や検事なんだそうだ、そして、四井宗一郎、名前でわかるだろうと言われた、四井グループの御曹司。 「今、きみたちと対等に当たるのは、私たち三人だけだ、さっきのは、まあ、秘書というところか」 「それ以下ね、まあ頭はいいから使っているけど」 「南はきついからな、まあ、これから一年頼むよ」 正味俺たちがかかわるのは、十二月のパーティーまでだ、一年、忙しくなるが頼む。 「あの?何をするんでしょか?」 「別に、たいしたことはしないわ」 まずは顔見世だ、次、この学園を仕切るのはきみたち四人、ちゃんと覚えてもらう。 「それと、去年、あなたたちは好きなことができた、それは、私たちが守ったから、今度はあなた方が次の守るべき者たちを守るの」 守るべき者達を守る?それはどういうことですか? 「そうだな、簡単にいえば、学園内で起こる火の粉を遮る、とでも言っておこうか」 「火の粉?火事になる前にけしたっていうことか?」 「そうだ、宗一郎、あれを」 ポケットから一枚の写真を出した。 俺と、健は声をあげた。 「彼女は、モデルの、伊藤詩織、産業スパイだ」 「若く見えるけど、三十だよ」 「まじ?」 「学生だって」 彼女はカリオンのモデルに入り込み、大手通販会社の商品とわざと合致するように仕組んだ。だが結果、健の手腕が発揮されることとなり、彼女は失敗に終わった。 「ちょっとしたすきを狙う、俺たちは、こういうものも排除する手助けをする」 「広大なネットワークを通じてね」 「俺たちはもうどこかでつながってるんだ、魅録は、千弘と健、俺は、信成君、南は、林君とね」 何かしらでつながっているという、親戚だけではない物だそうだ。 「そして、私たちは、新たに、ここで交流を深め、この七人はまた枝葉を広げ人と結びついていく」 電話が鳴った。 はい、はい、わかりました。魅録さんは俺の方を見た、なんか関係あんのかな、ドキドキする。
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