第二話 尻ぬぐい

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第二話 尻ぬぐい

「まったく、いらないことするなよな、千弘、来てくれ、後を頼んでもいいか」 「いいわよ。もしかして、晴ちゃん?」 「もう、しりぬぐいは勘弁してほしいよ、行ってくる」 はるちゃん?晴彦さんの事か?もしかしてさっきの… 「どこに行くんですか?」 「親戚のしりぬぐいだ」 「晴ちゃんて、晴彦さん?」 「まったく、本家なんだからしっかりしてほしいよ」 当たったー、こんなことするの?あの人大学院生だろ? 理事長室、さっきの茶室のすぐとなり、ドキドキする。 「失礼します」 「失礼いたします」 「よっ」 でかい態度で椅子に腰かけて手を振った、理事より偉いのかよ! 「まったく、今度はなにをやらかしたんですか?」 ってことは常連? 「やってるとこ生徒に見られちゃってさ」 それ俺たちだ。 「誰にですか?」 「桃の花があったんだよなー」 俺の方見るなよな。 千弘?知っているのか? もう開き直れ。 「まったく、あんなとこでよくやるよ、ちゃんと丸め込んどいた」 「さすが―、チーちゃん」 「やんなら場所選べよ」 「だって、和室だったし」 「じゃねーだろ」 怒ったーと口を尖らせた。 「まあ、まあ、こっちも、了解済みだったっていうし、魅録君、生徒の方頼みます」 「理事長太っ腹―」 じゃねえだろ! 「しっかり、ペナルティ言い渡しますんで」 「はーい、覚悟してまーす」 失礼しますと頭を下げ出て来た。 常連ですか? 節操がなくて困る、早く卒業してほしいよ。 院生だそうですね? 五年だ、まったく、何になろうとしてるのか? 医学部じゃ、先生でしょうか? さあな、わからん、頭がいいのにぎりぎりの単位で上り詰めるんだからな。という魅録さんの後を追いかけた。 そうなんだ。 かかわらないほうがいい、今みたいにあしらっておけと言われた。 部屋に戻ると一斉に俺たちの方を見た。 「魅録、これ。四人がもらったそうだ。千弘と、健、信成は親から手紙を出したそうだ」 「林君は、コンサートの打ち上げに使ったそうよ」 シークレットのことか。 次の日に、俺と健から連絡はもらったと話している魅録さん。 「まったく、あいつ、するなって言ったからこいつらに」 「次は使えないわね」 「いいんじゃないか、俺たちをなめたったてことでさ」 「次は後輩君がしてくれるわよ、ね」 何の話だったと聞く信成、あとでと話した。 「さて、そろったから次だな」 これは来年の一年生だ、とプリントが回ってきた、そこには三人の名前と親の会社なんかが事細かに書いてある。 「あら、一人減ったの?」 「海外へ飛んだ」 「そうなの、三人ね」 「だんだん減るな」 仕方がない、今度は入学式の後、俺たちは、保護者にあいさつをする、保護者が別室に集められているのは知っているな? そこでは、金の話なんかがシビアにされる。俺たちは、生徒がもし、何か不始末をしたとき、ペナルティを生徒に貸す。それは親へダイレクトに行き、寄付という形でお金を出してもらう、それが生徒会の運営資金。 「パーティー、安いと思わなかった?」 「ええ、あのホテルなら、二万は取らないと」 「それを、寄付で賄うんだ」 「じゃあ、生徒に還元すればいいのに」 「それはできないわ」 「動いてるのは我々だ、賃金をもらって然り(しかり)なんだ」 「十五歳以上ですからね、あなた方も、確定申告が始まればわかるわ」 ちょうど終わって、帰るとき、あの、部活の侵入部争奪にかち合う、いやでもあそこを通って、一年に、生徒会をアピールするのだそうだ。 「あの、先ほどの二人は?」 「あいつらは正式な生徒会、まあ早く言えば俺らが裏ってところかな」 かっけいい、裏生徒会。 「健みたいのが、生徒会にいてみろ、すぐに下に見られる」 「そうね、顔と、センスだけだしね」 「チェッ」 「まあ、まあ、いろんな奴がいるからさ、表向きは、まじめじゃないと困るってことだよ」 そういうことね。 そして、俺たちは、明日から、昼はここへ必ず集合、飯もここで食っていいんだって、そして放課後は、昼に指示を出すのと、メールで指示、本当に何にもない時だけ、部活に出られるかもね、なんて南さんに言われた。 それと、これからは、安易に、ファーストフード店なんかには入らないように、どこで、何が起こるかわからないからだそうだ。 「えー、せっかく、スタバのコーヒー頼めるようになったのに」 「いけないの?」 「豊田も行くのか?」 「行っちゃまずいですか?」 「いやー、いいけど」 「もしかして四井さんいったことないんじゃ」 「わるかったな」 くすくす笑う南さん 「お前行ったことあんのかよ」 「あるわよ、〇ックも、〇スもあります!」 あ、かわいいかも。へー、顔赤くして女の子だ。 「つまんねーの」 「まあ付き合いもあるだろうから、他校に絡まれたりしなければそれでいい」 「後、誘拐とかね」 「そういうことだ、以上だ、何か質問は?」 「そのうちでもいいっすか?」 「一回には無理です、かまいませんか?」 「かまわないわ、明日からもこうして顔を見せ合うんですもの、それじゃあ、ごきげんよう」 「じゃ、お先に」 「君たちもいいぞ」 「失礼します」 「どうするよ?」 「俺、着替えたい」 俺も、シューズの中土が入ってるからな、と下を指さした。 「手も洗いたいし」 みんなのところから一番近い俺んち行く?そうするかという事になった。 もう、慣れたもので、みんなスマホで連絡。帰りは土田さんに送ってもらう、みんなが車に乗り込んだ。 「でさ、何だったんだよ」 「晴彦さんだよ、茶室でやってやんの」 「やる?何をだよ」 「セックスしてたんだ」豊田が小さな声で言った。 それをのぞいていた生徒がいるから、口止めしてほしい。そういうこと。 「親戚の特権というわけか」 「二人もいるんじゃそうなるよな」 「頭いて―わ、んで、そっちは」 健が、原先輩に聞こうと思って持ってきていたものを、四井さんに、見せたんだそうだ。 「現金は俺たち四人だけ」 「ほかの人は、ロールケーキとワインとホテルの割引券」 「妥当だろうな、そうだ、ケーキは?」 「ケーキ?あれ、運転手にやった」 「俺、メンバーが食った」 「噓、中に金貨が入ってたんだ」 「いいんじゃねそれぐらい」 「まあケーキにコインはあるからな」 「でもあのちいせいのにだぜ、びっくりしたよ、がじって歯に来た、歯に」 二十四金ゴールドは、それなりの重さもあって、地金としても価値があるらしいけど、なんだかなー。 「ホテルは、ABCホテル、二年生に社長の娘がいるそうだ」 二年という事は三年か。 「あー、俺んとこきたわ」 え?俺らの家にはものすごい数の人が押しかけてきた話をした。豊田も林もだそうだ。 「そんなことしなくても正攻法でくればいいのにな」 「大人はそうもいかないんだろ、娘に頼む度量もないってことさ」 「そういうことか、大変だな」 そんな話をしているうちに家につき、俺たちは部屋に上がった。豊田と二人先に風呂へ行って着た、豊田のはしゃぎっぷり、旅館並みと大騒ぎだった。 「いらっしゃい」 「お邪魔してます」 「おう、久しぶり」 マーが顔を出した。 「ご飯どうしますかって」 「食ってく?」 食べるという事になり、俺たちは、話に夢中になっていた。 「ごはーん」バンと扉が開いて怜が顔を出した。なんかにこにこしてるのは俺たちが友達を連れてきているからだろうか。 「びっくりしたー」 「怜、ノックしような」 「ごめん、忘れた」 おかえり、ただ今の声、二人はじいちゃん、ばあちゃんにあいさつしていた。 「それでは、いただきます」 「いただきまーす」 「すげーな、いつもこうか?」 「大人はかけるときがあるけど、子供だけはそろって食べるよ」 「遠慮しないで食べてね」 いっぱい食べて、いっぱい笑って、ついでに宿題もして、二人は帰っていった。 「明日から、出来んのかな、なんか緊張してきた」 「俺も、なあ、あそこに行くとみんなあんなしゃべり方になんのかな、ごきげんよう」 「おー、そうだよな、すましてるっていうか」 「でもたまに素が見えるときもあるんだよね」 「そうか?」 「うん、結構ね」 「ふーん、寝るかなー、そういや、今年は、モデルの話こねーな」 「もう、いいや、寝る」 「俺も」 でもこの生徒会は俺たちの未来を変えてしまうかもしれないほどの力を持っていた。 俺たちは二年になると、それぞれの背中に、とてつもないものが覆いかぶさってくることをこの時はまだ知る由もなかった。
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