第二十三話 面接官

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第二十三話 面接官

次の日、父さんと俺は別れて、三人ずつの面接を行った。 まずは社員、目標は海外渡航。行きたい人は大勢いる、その中から選ぶんだ。 会社に臨むこと、やってみたいこと、自己アピール、ここに来た人は、推薦があったかもしれないけど、ある程度、行ってみたいと思う人だ、向上心がある人はどんどん拾っていってほしいと言われていたんだ。 真面目な人もいれば、昨日の尾崎さんみたいな人もいるけど、俺にはキラキラしたものが見える人には印をつけて行った。 「次の方どうぞ」 三人男性が並んだ。 「お名前と、簡単な自己紹介、このプロジェクトに参加した訳をお聞かせください」 二人は、同じようなことを言った、でも、三人目の人は。 「十津川真治、二十八、高卒、行けって言われたから来ました」 想定はしてたけど、「へーモデルがこんな所に来てんだ」 「口のきき方に注意しなさい、貴方の上司ですよ」 「へー、上司ね、自己紹介してください」 「おい」 俺はそれを制した。 ガタン。 「木村千弘、十七歳、高校二年生です。僕の父、隣の部屋にいる社長の子ではありません、母の再婚した相手が、このカリオンの社長でした。ですが、父は、尊敬できる人で、僕はそのそばでこうして仕事できることを誇りに思っています、この先の、カリオンの発展のために、尽力いただいている皆様にはこの先、どうしても、お力をお借りしたく、このような場を持たせていただきました。海外で働くことに、異論を立萎える方もいらっしゃると思います、ですが、それぞれの店舗からこられた代表者の方々と思ってこうしてお話を伺っています。年齢では年下ですが、僕ももっと早く生まれていたなら違う運命があったと思います、ですが、ここに居るからには、あなた方の雇い主です。どうか意見を聞かせてください、よろしくお願いします」 俺は頭を下げ椅子に腰かけた。 「十津川さん、高校生がこれだけ言えるんだ、君も話してみたらどうですか?」隣にいた方が話す。 彼は、とまどいながらも家族を残して海外へはいけないことを話してくれた。 三人が外へ出た時俺はぽつりと言った。 「始めから言ってくれればよかったのにな」 「何かあったから突っかかってきたんだ、まあいい、仕方ないし、次にいきましょう」 そして、最後の人が終わり、俺は思い切り伸びをした。 「おわったー!」 「ご苦労様、隣に行きましょう」〈腹減ったー〉 「食事も来ますよ」 隣も終わっていた、書類を広げ、話を始めた、食事は簡単な物だっていってたけど、海鮮丼がすごくて、刺身ドーン、うにドーンにびっくり、超おいしかった。 「そんなことが」 「まあ代理がうまく返したんで、彼も訳を話してくれましたし」 「廊下はどうだった」〈チェック済みです、スマホ異存は感心しませんね〉 廊下では、スマホをずっといじっている人をチェックしてた、仕事をしていた人はのぞいてある、どうしてわかったかって?並んで待っている後ろはガラスや鏡で、こっちにいるのはそれを見ているだけでわかるってこと。 「半分か」 「想定内ですね」 「まあ、後は研修でどうなるかだな」 「明日は、若い人と大卒見込みの子たちが来ますからね、時間はだいぶとってありますがどうなる事か」 今日はゆっくりして下さいと言われたけど。 「きになってることがあるのか?」 「うん、彼ね、家族を置いていけないって、病気かな」 家族構成は母親と妹だけだ。 「たぶん、行きたいんだろうな、あのね」 もしも、面接官が父さんだったら、彼は、行こうとしてたかもしれない、でもそこに現れたのは俺みたいな子供だったから、切れちゃったんだと思うんだ。 「んー、そうなのかな?」 「あのさ、俺、父ちゃんが死んだとき、兄ちゃんとわがまま言わないで、ほしいもの我慢しようって決めてたんだ、なんかそれ思い出しちゃってさ」 「でもな、これだけの人だ、彼一人だけというわけにはいかないんだ」 「うん、それはわかる、わかるんだけどさ」 「旭川か」 旭川はこの先、店をリニューアルするために今の場所を閉店することが決まっているのだ、その後は、物流センターに代わることになっている。 「チャンスはまたあるよね」 彼の履歴書を見ていた、頭はいいし、慕われているのか、彼の部署は仲がいいらしい。ほしい人材だな、そう思わせてくれたのは確かだ。 「そうだな、これが決定じゃないからな」 パサリとその書類を返された、微笑んでいて、好感触?そう思った。 「ありがとう、先に寝るよ」 帰ったら手紙でも出そう、次の機会に誘いたいと書いてみよう。 「おはようございます」 「おはよう」 みんなが食堂へ集まってきた。 お?なんだ、健からだ。ライン ツイッターに何か乗せた? 何位もしてないよ、今起きた。 そこには、ホームページでお前何やってんだ?の文字、そこで開いた会社のホームページ。 「うわー!」 「なに?」隣ものぞき込んだ。 「どうしたんだ?」 「父さんこれ?」 「あいつー」 「どうかなさったんですか?」 みんなに携帯を見せた。 「すごいな」 「さすが動くの早いわね」 「何で俺使うかなー」 「いいんじゃないの?これぐらい」 ウエディングドレスやドレス眠っていませんか?そこには俺の写真の切り抜きがいっぱい、アニメーションのように動き回っている。 それをスクロール、下には着物や小物買取も書いてある、こっちは西田の会社名、まじ? 企業の方々へと書かれたところも俺が頭を下げてるの使われてるし、もう、なるようになれ。でも、朝の食事をしながら思った、さすが近藤さんのお兄さん、似てる?似てるんだろうな・・・ 大学生は緊張して入ってくる、これで内定決まるんだもんな。 「うちにはいっても、希望する職種に行けないこともあります、それでもかまいませんか?」 「はい、かまいません」 「料理はなさいますか?」 「最低限はします」 「もし、コンビニのない所に行くことになっても生活できますね」 えっ?という人が関東圏には多かった、日本全国に行くんだ、それくらいなくてもいいよね。意地悪だけど。 「はい」 北海道生まれ、魚やイカはさばけますね。なんてちょっと横道にそれた質問もしてみる。案外みんな真面目に返事をしてくる。 「はい、もちろんです」男性もだ、自信があるぞって言っているみたいで楽しい。 「もし、君に、四月に入社してもらうとして、海外へ行ってほしいと言われていけますか?」 「必要とあれば」 〈ちょっと脅してみようか〉 「では採用しましょう、移動先はインド、三年は帰ってこれません、おめでとう」 「は?本当ですか?」 「今君は必要とあればと言われたじゃないですか、会社は必要としてます、行ってくれますね」 「・・・すみません、お断りいたします、失礼します」 肩を落とし背中を丸くして出ていってしまった。 「あーあ、いいんですか?」 「いいと思ったんだけどなー、次入れてください」 「あんまりいじめないでくださいね」 「いじめてないもん」 数人が終わったところで隣から人事部長さんが入ってきた、あまりにも早いから、何が起きてるんだと聞かれ、俺は正直に話した。 「ハー、かまかけるのもいいですが、本気にしたらどうしますか?」 「いいじゃないですか、本気、俺はそういう人がいいです」 「まったく、今までもなさってたんですね。いくら社長が好きにしろとはおっしゃっても」 「じゃあ、社長に直接聞きます、ちょっと休憩」 俺はドアを開けた。 「ごめん、ちょっと待ってて」 並んで待つ人たちにそう言った。 「モデル?」 「千弘だったよな」 ハハハ、いいんじゃないか、俺もそうしようかな。 「社長―」 「でもやりたい人はのって来るよ、俺はそんな人がいい」 「お前、他のところでもやってたのか?」 「あっ、ごめんなさい、報告してませんでした」 「まったく、でもそうだな、内定もらっても嫌な奴なら来なけりゃそれまでだ、やってみるか、千弘、それでいいと思った人はいるか?」 残念ながら今は一人もいない。今?それじゃあ前は?いたよ三人だけど。 フム、そのまま続けてみろと言われた。 「社長―」 「こっちは正規でしましょう、千弘、やってみろ、後数人だ部長やらせてみましょう」 「もう、知りませんからね」 結局、その後も一人ものってこないで終わってしまい、帰ってから、SNSに乗ってるのを見つけ、父さんに報告、見て、つかえねー。 残念だったなと大笑いされたんだ。 北海道は時間に空きが出来て、みんなで買い物と観光をしたんだ。
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