第二十四話 ハンマープライス

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審査員十人がうちの学校のを何度も上から横からのぞいているのがわかる。 「ダメか?」 「いや、ちゃんと聞いたんだ、絶対三位以内に入る!」 「部長が言うんだ、大丈夫!」 審査員が並ぶ、並んだ水槽をまだちらちらとみてる。 「審査結果、そう表をお願いいたします」 ではと言って評価が始まった、タイムトライアルに関しては、二位だったが、それでも検討したし、去年の覇者としてほめていただいた。ほかの学校が真似したんだ、仕方がないよな。 「それでは、結果集計が終わりました、発表いたします」 みんなが祈る。 「第三位、岩手県代表…」ウオーという歓声で声がさえぎられてしまった。 「第二位、」ここでもいい。でも一位になりたい!みんなの願いは・・・ 「愛知県代表…」キャーという声、去年の二位、またかという声、トライアルでは一位だったのに。それじゃあ。期待は高まる。 「第一位、東京都代表星周・・・」 「ヤッターーーー!!!」「二連覇達成だ!」「キャーーーー!」 もうその後覚えていなくて、表彰は最後、まだ個人が残っている。それでもトロフィーだけはもらった、この後飾られた横に置くために。 部長のガッツポーズに俺たちはわいたんだ・ さて、次は、個人どきどきする。みんなが胸を押さえながら進む、もう歓声が上がってる。 ひときわ目を引く大きな作品が並ぶ。 「木村!」「千弘君!」「ちーちゃん!」 制服を引っ張られた。 なんかすごい事になってるという。 鮫島先輩に書いてもらった、木の板に、昇り龍、達筆な文字で書かれた物に目が行くが、その下に並んだもの。 特別賞 文部文化大臣賞 高等学校連盟文化特別賞 「なんか凄くねえ?」 前を歩く生徒が言う、確かに、赤い花が飾ってある。みんなが其処を通る時ガッツポーズをするのがなんかうれしくて。 ウワーという声がする、みんなが東京都の前に団子になってみているのがわかる。 「悔しか―」 「なんやねんこれ」 「くそ―、この手があったか―」 アクアリュウムを見てるんだ。 そう、うちの学校だけ、生きたエビが入ってるんだもん。 「先生、写真、写真」 並べ、早く、前座って、いいか、作品見せろ、撮るぞ、一たす一は 「にー」 女子は泣いちゃうし、俺たちもそれにつられて泣いちゃうし。ノミネート作品すべてが、三位以内、そして、豊田は、いけばな、洋花五点大菊の部で優勝、俺たちは二冠を取った。 去年の事で他の学校は、俺たちが、貧乏部だと知って、今年は何も言わなくなった、それは去年の部長が、お金が無いので、貰った物のリサイクルと、野菜を売った売上での部員の活動などを話したからだ、もう金持ち学校だからなんて言わせない、って言うか、うちの学校凄くない? 「イエェーイ」 そして、オークションが始まった。 アクアリュウムや生の花を使った物は、写真を撮って、それがアルバムになり、参加校に配られるんだ。 オークションにかけられるのは、盆栽、各学校の作品と、個人の物、別に、大事に持って帰るのはかまわないが、三分の一の学校が参加、個人の物はすべて、オークションにかけられた。 五百円からだが、高校生の物でも数万円で取引が行われた。 有名な、オークション会社が来てのセリは、世界中の注目となり、海外の作品ももちろん加わる。これは、生の花は、個人の所に行って飾ったりするんだそうだ。それもすごい話だ。 「次にまいります、優勝を受賞いたしました、木村千弘さんの作品、二点です、まずは、こちら、梅、一万円からスタートします」 会場がざわついた、一万円、けたが今までと違う? そんな事より金額が上がる、電話で話している人たちが指を、ぱっぱとあげているのがわかる。 爺ちゃんは審査委員だ、それを見てうれしそう。 「三千二百万、三千二百万、チェック、483番、三千二百万落札です」 三千二百?まんだよ、まん!三千二百万‼寒気―チキン肌―!何ともいえない興奮でみんなが大きな声を上げた。 「静粛に願います、続きまして、黒松にうつります、一千万からスタートします」 それもまた嘘だろうという声。 「一億が上がりました、一億二千、一億三千・・・」 「なんかこえ―よ」「俺も、震える」「おシッコ行きたい」「それは行ってこい」 「どこまで上がるんだろう」「これが部費なら喜ぶべきなんだけど」 「二億、二億、二億でよろしいでしょうか、チェック、89番、二億円で落札」 大きな拍手とものすごい声、そしてフラッシュ。 次の日の新聞は、高校生の作り上げた盆栽が、二億で落札の文字。に、わくはずだった。 「あーあ、残念、引退かー」「お相撲さんやめちゃうの」「辞めるんだってさ」 それに消されてしまったのだ、それでもある程度の写真が載っているんだからいいだろうというじいちゃん、高校生だからいいんじゃないかという父さん、あんまり写真が出るのもねえという母さん、なんなんだうちの家族は! 「それでも、うちの孫は優秀だもんね、ちーちゃん、おめでとう」 「おばあちゃん、あ」 「それよりさ」 ありがとうと言う間に兄ちゃんの声でかき消され、ばあちゃんにだけはちゃんとありがとうと言った。 そろそろ年末、兄ちゃんと、奥さんは忙しくなると話していた、それに父さんは休んだ分、仕事が待ってるぞと脅すし、そういや俺、休みないような気がする。 「休みか―、今度温泉でも行く?」 「連れて行ってくれる?」 こっちは新婚だし、行ってこいと言ってやった。 「二月は、今度何処?」〈パプアニューギニア?〉 いいなーという弟たち、冬休み、みんなでどこか行こうというけど、まあいいか。 「ゆっくりだな、学校いいのか?」 「やべ」「行って来る!」 俺の休みはこの先もなさそうだ。
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