第二十五話 林の確執

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いつ来たんだ、昨日帰って来たという。 俺たちは席を外すというと、リンはいてくれと言った。 時間が無いから飯食うから。 俺の持ってきた弁当を配りはじめた。俺はお茶を持ってくると隣へ、そこには絵美先輩がいた。お客様はいつから来ていたのか聞くと、四時間目の終わるころだという。先輩も来ていたのか聞くと、こういうお客様の時は、授業中の先生から連絡を受けるんだそうだ。それも大変だな。めったにない、大体が理事長室に通される、ただ、今理事が席を外しているんだそうだ。 なんか話した?ウウンと先輩は言っていた。 お茶を持って隣の部屋へ、先輩もお昼どうぞ、俺がやるからと言って部屋へ入った。 みんなは食べ始めていた。 「いつまでいんだよ」「クリスマス休暇だ、終わったら帰る」 お父さんは、いい匂いだなとのぞいた、みんな同じかと聞き、俺の母さんに作ってもらってると話した。 「それは、ぜひ、ご挨拶に行かなければ」 「そんな大したことはありませんから」 「いい仲間のようだな」 紅茶のカバーに手を伸ばされたので、俺は箸を置き、しますというと、カップを置かれた物に注ぎ入れた。 じっと息子を見ているお父さんは、こういった。 「母さんをむこうに連れて行ってもいいだろうか」 「いいけど、大丈夫なのかよ」 「母さんの実家に行こうと思う、手は出してこないだろうから」 「俺はいいけど、ちゃんとしてくれよ、兄貴の二の前はごめんだ」 「わかってる、リオは元気か」 「まあな、あの頃よりはずっといい」 「そうか、あえるだろうか」 リンは、パチンとはしをおきこういった。 「俺が大学でるまでほっとくのが条件だったろ、今さらなんで」 「…日本から撤退しようと思う」「いいんじゃねえの」 「お前はどうする」「俺はこのまま突っ走る、リオも面倒見る」 「でもな」「オヤジ、おれ、いますっげー、充実してんだ、この学園に入れてくれてありがと、感謝してる、だからあいつが卒業するまでは見守ってほしい」 「でも、母さんがいなくなれば」「いいよ、今までも何とかなったんだ。俺たちで何とかするし」 「そういう訳には」「あ、そうだ、千弘、俺、居候したい、もう一人いるけど、頼めないかな」 は? 「いいんじゃねえ、部屋空いてるし」 健、お前な、勝手に? 「アンだけ人いるんだもん、混ざっても変わんないかもね」 「豊田!」 「そう、そう、一人や二人、変わんねーって」 「花江―、いいたいこと言いやがって」 「亮、一人でかかえなくていい、リオは連れて行っても大丈夫だろう」 「勝手なこと言うな、やっと落ち着いたんだ、あんたが連れていったら、本当に兄貴みたいになるぞ、あんたはそれでいいのかよ、俺は絶対に嫌だからな、さっさとどこへでも行っちまえ、帰れ!」 リンはそういうと部屋を出て行ってしまった。 罰が悪い。 「すまないな」 健は、何かあったんですかと聞きはじめた、プライベートなことを話さないリン、今の話だと、家族と確執があるようだ。 「本当にいい仲間が出来たようだ」 そう言うと、話をしてくれた。 亮は、三人兄弟の真ん中、兄は五年前この世を去った、自殺だそうだ。 兄と亮は前妻の子、その家系が日本で大きな力を持っている。 中国人の祖父母、国籍は日本の奥さんと結婚、その力ゆえ、長男に、この林家を守るようにずっと言い聞かせてきたのだという、ベトナム生まれの彼は、その金ほしさに結婚したのだと言われ続けていたという。 まるで小姑だな。 今まで必死にやってきたのに、彼女が亡くなると、さらに、長男を溺愛し、日本で一番になる事を強要した、でも彼は、プレッシャーから死を意識するようになり自殺を選んだ。 亮は、もうその時には芸能界にいて、祖父母は家にいた末っ子をかわいがるようになる。ただ後妻との間にできた子はかわいがるというよりはいじめに近かったという、たぶん長男も、同じような目にあっていたのかもしれない、金も財力もない、私と結婚したばかりにというお父さん。 日本で生活していた亮の社長に頼み、奥さんと息子を日本に連れてきた、でも日本語が得意ではない妻は、おかしくなりはじめていた。 「前妻の祖父母の力が、あまりにも大きすぎて、何をするにも、彼女にのしかかって行ってしまった、私が日本に来るたび、帰りたいという、限界なんです」 「ですが、弟さんを連れていくというのは」 「彼女が守ってきたんです、日本なら、祖父母の力もそんなには及ばない」 「あのー、二人は、華僑に守られてる存在ですか?」 華僑は中国人にとってかけがえのないつながりだと聞く、彼はいまいちわかってないのでは?さすが、豊田は物知りだ。 「祖父母が亡くなれば、財産は、子供のどちらかに、そして、それは、息子たちを苦しめるものになる、私に力が無いばかりに、彼らには辛い思いばかりさせてしまう」 そうだろうか?リンは今充実してると答えた。それに、あの五人は、リンにたぶん…次を託すのはリンだろう。 そろそろ時間だ、鐘がなり、俺たちは戻ろうとした。 トントンとノックの音。 「大変お待たせをいたしました、戻って参りましたので、どうぞ、こちらへ」 「みなさん、息子をよろしくお願いします」 彼はそういうと部屋を出て行かれた。 「リンが外に出たがらないのは弟さんの為?」 「でも結構遊びに行ったじゃん」 「先に帰ってばっかりだったじゃん」 そう言われればそうだが、仕事だと思ってたけど、違うのかな? 教室に入るとふんぞり返ってるリン。 「本気なんだな?」 あー?と声を下からあげた。 「居候、母さんは喜びそうだけどな」 ガタンとイスがなり、みんなが俺たちを見た。 「感謝!」 と手を握りしめた。 「決まってねえし、一度弟連れてこい」 先生が入ってきた、リンは俺に抱き着き、みんなが驚いていた。
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