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第二十六話 林兄弟
そう言えば、あれから彼の名前を耳にしないが。魅録さんに聞いた。
「気味が悪いな、静かすぎて」
「まさか、おかしなことはじめたとか」
「それなら何かしら聞こえて来るさ」〈今年度で卒業ですよね〉
院に残るとは聞いていない、教授にも手は上げていないという。
そこにどたどたと独特な歩き方、あ~前生徒会長のあの方だと思っていると、ノックもしないでドアが開いた。
「何で健が生徒会長になった」〈なったって、いつものでーす〉
「魅録、お前やめるって言ってなかったか」「だってーこの方が楽しいんだもん」
「たのしいだ」「はい、はい、先輩、もう決まったんです」
パソコンをこっちに向けた。
ちっと舌打ち。
くるっとこっちを向き、ずかずかと、健の前へ
「お前は~、結城の恥さらしになるなよ、世界中がお前を見てるからな、千弘君、健のおもりしっかり頼むな、木村にも迷惑かえんじゃねえぞ」
「わ、わかってます、元ちゃん、怖い」
「恐いのはこれからだ、重鎮のゆうこと聞け、いいな、逆らうな、魅録、責任はお前にある、へまするなよ」「わかってます」
「みんな力を貸してくれ、この通りだ、こいつのしりぬぐいを頼むようで悪いがなにとぞ頼む」と彼は頭を下げた。
どたどたとドアに行き、ものすごい勢いでドアを閉めて行かれた。
「はー」「何なの?」「嫉妬だな」「そうね、頭は仕方ないけど、ルックス、カリスマ性は健ちゃんの右に出る人はいない物」
「そうなの?」「そういう事、もう少し、あたま、きたえねえとな」
それでも黙っているだけで花があるから、口を閉じて、きりっとしてればいい。
「はい、背筋伸ばして、顎引いて、笑わない、少し口角に力入れて、それじゃあ入れすぎ!」
南先輩の指導の下、それらしくなりそうだ。
俺たち三人は健のバックアップに勤めるだけさ。
俺たち生徒会A、その親戚関係S、企業の社長の子供たちB、政界の関係する子供たちC。
「大学、院生に関しては、卒業していない人は省いて、新規は二年生それもランクは上の物だけ各クラス一人から三人てとこだ、それと一年の三人」
「ひな形は同じもの、サインは、健、後の三人は苗字だけ」
「ホテル候補は夏のうちに予約しておかないといけない、来年はお前らで決めてくれ、今年は、ここに頼む」
「大手じゃないですか」
「それでも、この時期に駆り出すんだ、高くつく」
「そうね、あんたがたがダメにしちゃった企業も、またお願いします、なんて来たけど、つかえない物」
「え?ホテル側が来るんですか?」
そりゃすごいわ。
「そうだ、そこから条件のいいところに頼む」
「メリットがあるから来るんだな」
「そういう事だ、顔さえ売れれば次も使ってくれるからな」
「いいホテルしってるわで、使ってもらえるんですもの」
それもすごい事だ、うちもホテルやるようになったらそうなるんだろうな。
花束は?
写真に撮ってきた物を見せた。
「上等じゃない、さすがカリオンね」
「後、俺たち高校生だけなんですが、これ」
「かわいい」コサージュ?何するんだ?
「未成年、去年、だいぶ飲まされたんで」
「あー、呑まされるのわかる、特にCクラスは、親と同じに政治活動する奴いるんだよね」「勘違いだけどな、そうか、ホテル側の人に注意してもらうのか、考えたな、いいだろう採用しよう」
「あのー?」
女性はいいですよね。
好きにしろと言われた、ほっとした。
名刺の確認、受付の後ろに、それぞれの物を置く場所があるから、一人、五百は持ってこいと言われた。
「去年は親戚関係だったけど、今年はお前たちがそれぞれ活躍してる、だから、どんなのがよって来るかわからないからな」
「それじゃあ、ばらまけない」
バラまく?それどころじゃないという。
どういうこと?
「プレミアだよ」
「名刺に?」
「そう、学生の時のって、なんて言って近寄って来るからな」
「一人で、同じ人のを四、五枚もらうなんてこともあるのよ」
「特に、千弘、お前は社長代理として世間に知られている、覚悟しろ」
「覚悟って?」
「千枚じゃ効かないかもね」
「うっそー?」
「健、お前もな、ちゃんと、アピールしろ、先生なんだから」
「まじで?」
「信成、お前も、企画部長としっかり入れろ」
「入れていいの?」
「いいのよそれとリン」
「はい」
「お前、去年のやめとけ」
「え?」
四谷先輩は耳元で何か言った。リンは笑いながらそうさせていただきますと言っていた。何するのかな?
「だいぶ遅くなったな、それじゃあ、これで解散しよう」
それでも、まだ早い、俺は部活に顔を出したいと豊田と久しぶりに顔を出した。
「落ち着く―」
「土いじり最高」
そんなにきついのかとみんなに慰められ、癒された一日が終わろうとしていた。
父さんには、役員になっていることを話してあって、一週間だけ休みをもらった、それでも時間がある時は会社へ行く事は話してある、だって、またかって言うんだもん、仕方がないしね。
久しぶりに早く帰って来た。
「ただいま」
パタパタとスリッパの音、玄関には靴、客かな?
母さんが、爺ちゃんと父さんが呼んでる、そのまま応接室にという。お客さん?
リンが来てるという。
はえーな。
大当たり、部屋には、父親とリン、それと、女の子の様な子がリンの隣に座ってる、そしてマネージャー。
千弘、椅子を持ってきて座りなさいという。
仕事にも行かないで、父さんたちがここに居るということは緊急かな。
話は俺が来るまでの間にある程度の事が話されていたようだ。
爺ちゃんが話をしている。
祖父母から引き離すことが目的なら、場所がわかれば、そうもいかないのでは?
そうでもないという、今は、亮と一緒に芸能界に出るという名目で、何とかここに居ることが出来た、だが、それも知られることとなって、亮は口から出まかせのように言ったのかもしれないが、お付きの物に、二人で生活をするから構うなといい、人の所に厄介になると言ってしまったのだそうだ、それが家、あの大手の会社なら大丈夫だろうということで。でもなんでそんな事知ってるんだ?
「見張られています、常にではないにしても、動向は、知られています」
白い肌、顔を隠した髪の毛の間から見えた目が大きくて、かわいらしい顔立ち、スカートでも着せたら女の子と間違えそう。
二人で五年過ごした。
会社の寮は、もういられない、迷惑はかけらえない。ただ二人だけでは何か起きた時対処ができない、なにとぞお願いできないでしょうかと父親は頭を下げる。
「俺ら三人でもいいし」
〈部屋はいいんだ、本当によろしいんですね〉
聿さんの厳しい口調、子供を預かるんだもんな。健と三人か、そうなるよな。
「亮が、大学を出て、認められるまでお願いいたします」
爺ちゃんと父さんは、仕方がないなという感じで返事をした。父親は、涙を流しながら頭を下げていた、つらい立場なんだな、そう思った。
マネージャーさんはこれからもよろしくお願いしますと頭を下げて行かれた。
四人が帰り、飯を食いながら話そうという、その後、付き合えと言われた、会社か、ハア。
兄ちゃんたちも帰って来た。
健たちは終わったのか、片付け始めていたけど、父さんは話があると、みんなを座らせたんだ。
林亮、リオの兄弟を預かろうと思うがいいだろうか。
「リンリン、どうかしたの?」
父さんは、母親の様態が悪い事だけを話した。
「日本になじめなくてね、生まれ育ったところに帰るんだそうだ」
「何で一緒に行かないの?」「遠いからかな」
「遠いって?」「中国なんだ」
「遠いね」「歩いていけないね」
なんて言うチビたちに父さんは笑っている。
「マー」「ん?」
リオ君は、同い年なんだそうだ、ただ、学校に行ったことが無い、よければ面倒をみてほしい。
「学校行かないでどうしてたの?」「んー。いじめられていて、登校拒否らしい」
「女の子でしょ」「いいや、男の子だ」
かわいいね、女の子だと思ったと言う怜と真、そうか、それでいじめられてたのかな?
まあいい、これからは少しでも心を開いてくれればいい。
父さんは、力になってやってくれと言った。俺と健も頼みますと頭を下げたのだった。
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