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なんかめちゃくちゃ忙しい。
死にそうなんてへべれけになりながら、家の裏口の草刈りを終え、車や人が歩けるようにして、門も、きれいに洗った、近所の人が何事と言うので、こっちも使うんだという、真と怜に、曾孫が出来たのと聞く人たち、まだだよ―なんて言いながら楽しそう。
引っ越しのトラックが入ってきた。
離れ、いや、元の母屋、聿さんが小さい時はこっちに住んでいたんだもんな。
「ここ使って、リンは、遅い日もあるから一人でいいよな」
「悪いな」
「リオは、悪いけど、弟と一緒でもいいかな」
うんと頷いた、本当にかわいい、でももう少ししたら兄貴よりかっこよくなりそう。
「初めまして、雅弘です、みんなには、マーって呼ばれてます、よろしく」
「よ。よろしく」
「部屋、こっちでもいい?」
俺と同じ様に区切ってある、後は荷物を入れる時に決めていけばいい。階段はもう一つ、中央階段、そこは俺たちも使っている、リンと今あがってきた階段は、遅くなった時に使うように話した。
こっち、こっちと言って、怜と真が引っ越し業者を誘導する。
後は、やってもらえばいい、俺と健は外にいるから、マーに何かあったら呼んでくれと言った。
荷物を下ろすリンに父親はと聞くと、今、病院で退院の支度をしているそうだ、昨日、聿さんと会長には話をしに来た、まっすぐ、上海に向かうそうだ。
「だいぶ悪いのか?」
「まあな、それでも帰れるって嬉しそうだったけどな」
そうか、リンは母親とはうまくやっていたようで安心した。
俺たちも終わり、二階へあがって行くと笑い声が聞こえる。
それを見たリンが、笑ってるって言ったんだ。そうか、つらい思いしてたのかななんて勝手に思った。
「ちー兄ちゃん」
「ちーちゃん、地下、地下にいく」
「地下?ああそうか、楽器」
「楽器?出来るのか?響くぞ?」
「そこは任せなさい、リン、楽器持って行こう」
俺は、階段を下りながら説明、シアタールーム、今は使ってない、でも緊急時にはシェルターの役割をする端に置かれた非常用の水を見て凄いなという。まあ、ドンだけ大きな音を出してもいいし、仲間を連れてきてもいいぞなんて健は言う。
怜は、リオ君の手を握って話してる、楽しそう、よかった。
明かりをつけながら下へ下へと向かう。
「オー、すげ、スタジオみたい」「いいね、ここ」「いいだろう」
「ピアノがある」「使ってもいいって、ただ音があってるかわかんないって、ばあちゃんもうひかないから好きに使って」
「リオ、弾いてみるか?」首を振る
「弾いて~」「聞きたい」「へ、へただから」
「誰もわかんないって」「でも」
強引に手を引っ張る真と怜が椅子に座らせ、兄が、ふたを開け、赤い布を外した。
真っ白い鍵盤が顔を出した、何年もほったらかしだったからか、なんかくすんでいる。
それに手を置いた。
「すげー」
「しってる、しってる!」
怜と真は歌いだした、アニメの曲。俺でもわかった、この子はすごい。
兄は、ここにきて正解だった、千弘、健、マー君、よろしく頼むと頭を下げたんだ。
二人のたのしそうな笑顔、俺は、この笑顔を守ってやりたいとその時思った、家族がバラバラになる、兄弟がバラバラになるなんて、一度は経験したことだから、健も何か思うことがあるのか、よろしくなとリオと握手してたんだ。
全てが終わってから、マネージャーさんが来た、遅いよーと言われていたけど、子供たちだけで運んでしまったことを話すと、すみませんと言われていた。
一応部屋の事を話、地下へ案内。
グルット見回し、凄い施設ですね、作られた当時は、ものすごい技術だったんでしょうねと感心していた。
そして、やっと昼飯。
「すみません、僕までも」
「構いません、大勢は楽しいでしょ」
引っ越しそばとちらしずし。
みんなで作ったんだと偉そうに言う弟たちに、たじたじのリオ君、少しずつ慣れていってと母さん。
もうすぐ冬休み、うるさいけどよろしくねという。でも受験なんだから、少しは加減しろよと言うと、忘れてたという母さん、大丈夫かね。
おばあちゃんにもちゃんと三人は挨拶してた。
減るのはさびしいけど、増えるのはいいねというばあちゃん、感謝します。
マネージャーさんもこしてきたんだ。土田さんと同じマンション、すぐそばだ。
そして、荷解きが終わり、お風呂。
「風呂行くぞ」「え?」
真と怜は、二人を引っ張ってきた。
「何ココ、旅館?」「じいちゃんの趣味」
わーいと言って裸になって走ってく二人を俺が追いかけた。
「はいろうか」「はやく!」「う、うん」
はずかしそうにして入る二人は、その大きさに目を丸くした。
「大人数だし、時間もバラバラだろ、それに、女はばあちゃんと母さん、悦ちゃんだけだし、一緒にはいっても文句言わねえし」
「いやー、それは」
「まあ声かければ誰が入ってるかわかるしね」
「リオ、お願いがあるんだ」
湯船につかりながら、俺は、マーが小さい時の話をした。
風呂で、おぼれかけて大変な思いをした、それは、一人ではいると言って聞かなかった彼をほおっておいた俺の責任、大したことはなかったけど、あの時のことは後悔でしかない。
「だから、こいつらが、一人ではいらないようにしてほしい、みんなもそれをわかってるから、必ず声を掛けてくれる、頼んでもいいかな」
兄の方を見た、リンは頷いた。
「うん、わかった」
「ちー兄ちゃん、おなら。おなら」
「アヒル入れていい?」
大変だけど、頼むなといい、俺が相手をするのを二人は笑いながら見てたんだ。
マネージャーさんも風呂に入り、晩ごはんの準備。
そこには、兄ちゃん夫婦、爺ちゃんも加わり、後は父さんだけ、それでも、遅くなったと帰って来た、全員がそろうのは久しぶりで、新しい椅子が三つふえた。
「それでは、新しい住人亮君、マーとリオ君の受験成功を祈って、乾杯!」
「乾杯!」
たのしい食事、大勢いるのは、本当に幸せ。
夜、マーが降りてきた。
「どう?」
「今日はお兄さんのところで寝るって」
「そうか、どうだ、やっていけそうか?」
「うん、あいつ、いいやつだよ、たぶんいじめは、あの容姿と、もじもじ話すからなんだろうな、俺の学校だったらそんなことなかったのにな」
「どうして?」
「だって、外人多いもん」
「本当だな、でも、仕方がないよな、高校から、頑張ればいいし」
「うん、リオも同じ、星周だって」
そうか、後輩になるんだな、風邪ひくなよと言って、俺は先に二階へと上がった。
ちょっと覗いてくるかな?
ひょっと、廊下を見ると、そこには、先客。
「疲れたのよね」
「あれだけのパワーだ、疲れるさ」
母さんと、父さんがのぞいていた、任せとけばいいか。
俺は、部屋に戻った、健も疲れてるのか、もう寝ていた。
「おやすみ」
明かりを消した。
これからどんなことが起きるのだろう、ワクワクしてる自分がいた。
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