第二十七話 貧乏園芸部の成果

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なんかめちゃくちゃ忙しい。 死にそうなんてへべれけになりながら、家の裏口の草刈りを終え、車や人が歩けるようにして、門も、きれいに洗った、近所の人が何事と言うので、こっちも使うんだという、真と怜に、曾孫が出来たのと聞く人たち、まだだよ―なんて言いながら楽しそう。 引っ越しのトラックが入ってきた。 離れ、いや、元の母屋、聿さんが小さい時はこっちに住んでいたんだもんな。 「ここ使って、リンは、遅い日もあるから一人でいいよな」 「悪いな」 「リオは、悪いけど、弟と一緒でもいいかな」 うんと頷いた、本当にかわいい、でももう少ししたら兄貴よりかっこよくなりそう。 「初めまして、雅弘です、みんなには、マーって呼ばれてます、よろしく」 「よ。よろしく」 「部屋、こっちでもいい?」 俺と同じ様に区切ってある、後は荷物を入れる時に決めていけばいい。階段はもう一つ、中央階段、そこは俺たちも使っている、リンと今あがってきた階段は、遅くなった時に使うように話した。 こっち、こっちと言って、怜と真が引っ越し業者を誘導する。 後は、やってもらえばいい、俺と健は外にいるから、マーに何かあったら呼んでくれと言った。 荷物を下ろすリンに父親はと聞くと、今、病院で退院の支度をしているそうだ、昨日、聿さんと会長には話をしに来た、まっすぐ、上海に向かうそうだ。 「だいぶ悪いのか?」 「まあな、それでも帰れるって嬉しそうだったけどな」 そうか、リンは母親とはうまくやっていたようで安心した。 俺たちも終わり、二階へあがって行くと笑い声が聞こえる。 それを見たリンが、笑ってるって言ったんだ。そうか、つらい思いしてたのかななんて勝手に思った。 「ちー兄ちゃん」 「ちーちゃん、地下、地下にいく」 「地下?ああそうか、楽器」 「楽器?出来るのか?響くぞ?」 「そこは任せなさい、リン、楽器持って行こう」 俺は、階段を下りながら説明、シアタールーム、今は使ってない、でも緊急時にはシェルターの役割をする端に置かれた非常用の水を見て凄いなという。まあ、ドンだけ大きな音を出してもいいし、仲間を連れてきてもいいぞなんて健は言う。 怜は、リオ君の手を握って話してる、楽しそう、よかった。 明かりをつけながら下へ下へと向かう。 「オー、すげ、スタジオみたい」「いいね、ここ」「いいだろう」 「ピアノがある」「使ってもいいって、ただ音があってるかわかんないって、ばあちゃんもうひかないから好きに使って」 「リオ、弾いてみるか?」首を振る 「弾いて~」「聞きたい」「へ、へただから」 「誰もわかんないって」「でも」 強引に手を引っ張る真と怜が椅子に座らせ、兄が、ふたを開け、赤い布を外した。 真っ白い鍵盤が顔を出した、何年もほったらかしだったからか、なんかくすんでいる。 それに手を置いた。 「すげー」 「しってる、しってる!」 怜と真は歌いだした、アニメの曲。俺でもわかった、この子はすごい。 兄は、ここにきて正解だった、千弘、健、マー君、よろしく頼むと頭を下げたんだ。 二人のたのしそうな笑顔、俺は、この笑顔を守ってやりたいとその時思った、家族がバラバラになる、兄弟がバラバラになるなんて、一度は経験したことだから、健も何か思うことがあるのか、よろしくなとリオと握手してたんだ。 全てが終わってから、マネージャーさんが来た、遅いよーと言われていたけど、子供たちだけで運んでしまったことを話すと、すみませんと言われていた。 一応部屋の事を話、地下へ案内。 グルット見回し、凄い施設ですね、作られた当時は、ものすごい技術だったんでしょうねと感心していた。 そして、やっと昼飯。 「すみません、僕までも」 「構いません、大勢は楽しいでしょ」 引っ越しそばとちらしずし。 みんなで作ったんだと偉そうに言う弟たちに、たじたじのリオ君、少しずつ慣れていってと母さん。 もうすぐ冬休み、うるさいけどよろしくねという。でも受験なんだから、少しは加減しろよと言うと、忘れてたという母さん、大丈夫かね。 おばあちゃんにもちゃんと三人は挨拶してた。 減るのはさびしいけど、増えるのはいいねというばあちゃん、感謝します。 マネージャーさんもこしてきたんだ。土田さんと同じマンション、すぐそばだ。 そして、荷解きが終わり、お風呂。 「風呂行くぞ」「え?」 真と怜は、二人を引っ張ってきた。 「何ココ、旅館?」「じいちゃんの趣味」 わーいと言って裸になって走ってく二人を俺が追いかけた。 「はいろうか」「はやく!」「う、うん」 はずかしそうにして入る二人は、その大きさに目を丸くした。 「大人数だし、時間もバラバラだろ、それに、女はばあちゃんと母さん、悦ちゃんだけだし、一緒にはいっても文句言わねえし」 「いやー、それは」 「まあ声かければ誰が入ってるかわかるしね」 「リオ、お願いがあるんだ」 湯船につかりながら、俺は、マーが小さい時の話をした。 風呂で、おぼれかけて大変な思いをした、それは、一人ではいると言って聞かなかった彼をほおっておいた俺の責任、大したことはなかったけど、あの時のことは後悔でしかない。 「だから、こいつらが、一人ではいらないようにしてほしい、みんなもそれをわかってるから、必ず声を掛けてくれる、頼んでもいいかな」 兄の方を見た、リンは頷いた。 「うん、わかった」 「ちー兄ちゃん、おなら。おなら」 「アヒル入れていい?」 大変だけど、頼むなといい、俺が相手をするのを二人は笑いながら見てたんだ。 マネージャーさんも風呂に入り、晩ごはんの準備。 そこには、兄ちゃん夫婦、爺ちゃんも加わり、後は父さんだけ、それでも、遅くなったと帰って来た、全員がそろうのは久しぶりで、新しい椅子が三つふえた。 「それでは、新しい住人亮君、マーとリオ君の受験成功を祈って、乾杯!」 「乾杯!」 たのしい食事、大勢いるのは、本当に幸せ。 夜、マーが降りてきた。 「どう?」 「今日はお兄さんのところで寝るって」 「そうか、どうだ、やっていけそうか?」 「うん、あいつ、いいやつだよ、たぶんいじめは、あの容姿と、もじもじ話すからなんだろうな、俺の学校だったらそんなことなかったのにな」 「どうして?」 「だって、外人多いもん」 「本当だな、でも、仕方がないよな、高校から、頑張ればいいし」 「うん、リオも同じ、星周だって」 そうか、後輩になるんだな、風邪ひくなよと言って、俺は先に二階へと上がった。 ちょっと覗いてくるかな? ひょっと、廊下を見ると、そこには、先客。 「疲れたのよね」 「あれだけのパワーだ、疲れるさ」 母さんと、父さんがのぞいていた、任せとけばいいか。 俺は、部屋に戻った、健も疲れてるのか、もう寝ていた。 「おやすみ」 明かりを消した。 これからどんなことが起きるのだろう、ワクワクしてる自分がいた。
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