6人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
第二十八話 晴彦さんの未来
シークレットパーティーも終わりを迎えようとしていた。ガチガチに緊張した健の、乾杯とあいさつに、料理はどれも空になる程で、去年とは雲泥の差だったとほめてもらった。
そして、俺たちホストは大役を果たすべく、ゲストたちを見送った。
「ヒャー、終わった」「終わったー」「疲れたー」「よくやったよ、ご苦労さん」
片付けが終わると、花江と近藤先輩が最後カギをかえしてすべてが終わる。
俺たちは先に、会長室へと向かった、そこは生徒会のみんなの荷物が置かれた控室となっていた。
「ん?誰かいる?」「誰だねてるの?」〈男?〉「先輩は?」
「いるぞ」「誰だ?」お前見ろよと押された。
花江とリン専用のブランケットを頭からすっぽりかぶって寝てる人
そっとあけた。
「まったく、おーい、起きてください、終わりましたよ、晴彦さん」
「晴彦?」「ゲ、悪の元凶かよ」
「誰が悪の元凶だってー、ふあ~あぁ~」ヒェー!
終わったかと言って伸びをして起きてきた。
よく寝たといって、俺たちの袋をのぞいて、俺のはという。
「はいこれ」「いいのかよ」
「いいんですよ、余りものですから」
「オー、奮発したな」「もう、帰りますよ、出ていってください」
「ちー」「はい」
「かえるなら、つれてけ」「どこへですか?」
「お前んちに決まってるだろ」「え?なんでだよ」「まじかよ」
車に乗り込む、健とリン、なんでお前らが一緒なんだという。
「俺ら居候」「一緒に住んでる」「それこそおかしいだろう」
「いいじゃんな」「ちゃんと、話はついてるんだ、あんたには関係ない」
「まあ、そりゃそうだけど」
俺はなんのようか聞いた。
会長と父さんに用があるのだそうだ、ちゃんとオファはとってあるんだって。
まってなくてもいいのに。
「車があんだからいいだろ」「いいけどさー」
後ろの席はにぎやかだ、土田さんにお土産を渡すとうれしそうだった。
着替えをして、衣装は俺が全部持って行くから、俺の部屋に置いてくれといい、三人で風呂へ向かった。
「何しに来たんだろう」「まさか、木村を傘下に置くとか」
「考えそうだけどな」「それより、飲み屋でへまやらかしたとかさ」
「あー。そっちがありえんじゃねえ」
なんて、どうでもいい話をしてでてきた、キッチンで、母さんが作ってくれたおにぎりとみそ汁を食っていた。
「あ、ここに居たか、ち―、応接室に来いって」
兄貴がキッチンに顔を出した。
俺は喰った物を流しに置くと、兄貴の後を追いかけた。
「なんだろう」
「俺、あの人苦手だわ」
俺も何だよなと言いながら応接室へ入った。
テーブルの上に広げられた書類を二人は見ている。
椅子を持ってきて座れという。
父さんは、見ていた物を兄貴に渡した。
「それで、やくざは」
やくざ?
「しょば代として一億、払えなければ、撤退を言ってきた」
一億、なんの話だ?
「一店舗か?」
「はい、七か所は大きすぎます」
爺ちゃんは立ち上がり、スマホで何か話しはじめた。
兄貴は見た物を父さんに返すと、それを俺によこした。
凄いな、ホストクラブが二か所、飲み屋が三か所、クラブが一か所、劇場が一か所かどれも新宿が近いのか、めくりあげると、移転先の候補がいくつものっている。
そして金額も、借金は、凄い、返し終ってるんだ。
利益もすごい額だな。
爺ちゃんが座ると、今調べてもらっているという。
「お前は何がやりたいんだ?院もいるわけじゃないんだろう?」
「オヤジさんは知ってるのか?」
「いいえ、俺は佐藤の家には何のこだわりもありません、これも俺一人でやってきました、これからもそのつもりでした、でも、力をお貸しください、俺のやりたいことはこれなんです」
そこに出した、きれいな空と海、パンフレット?
「リゾート開発か?」
「この国は、海に沈むだろう」
聞いたことがあるのはスバルという島国だだがそれだけじゃない、数年でなくなる島国がまだあるってことを。
「水上ホテル、まあ、有名なところはあるが」
三年前、大学に来た留学生と仲良くなった、彼はこの国を何とかしようと必死だった、住民は、感心が無く、何とかなるだろうぐらいにしか思っていない、一番大きな島でさえ、危ういのに、もう沈んでしまった島もあるのに国民は無関心なんだそうだ。
何もしないで手をこまねいている、彼は世界中を飛び回り、助けてほしいと言って回っているんだそうだ。
「あと三年、社員たちの育成をして、エンターティナーとして連れていきたかったんですが、俺、負けたくないんです、兄貴たちみたいな事を俺はできないから、どうせ、親たちの関心のない末っ子です、俺は、俺のやりたいことをやりたいんです」
へー、なんか、まじめジャン。
「御社にはご迷惑はかけません、ですが、なにとぞ、もう一度お力をお貸しください」
…?もう一度?
父さんは、爺ちゃんを見た、横を向く爺ちゃん。
あっちゃー。兄貴もため息。
「なぜ教えてくれなかったんですか!」
「だってー、ちゃんと返済してくれてるしー、利益も黒だし―」
子供かよ。
カバンからタブレットを出し、説明を始めた。
兄ちゃんは隣で何か検索してる。
これ、といって見せられた、彼の友人は王様だ、ただこの島の利益はほとんどないのが現状。
「やって行けるのかな?」
「どうだろうな?」
父さんもやめた方がいいのではと言っている。
爺ちゃんは腕組みをして考えてる。
「千弘」
「はい」
グループの売り上げ、資産に関する物を出せるかと聞かれた。父さんがインドに行っているときに爺ちゃんに聞きながら作った物だ。
「見込みでいいですか?」
「いや、先月までのを頼めるか」
「部屋に行ってきます」
「典弘」
「はい」
「お前の方も出せるか」
「私も部屋に行ってきます」
父さん、あの子たちに何やらせてるんですかという声が聞こえる。
階段を上りノートパソコンとデータを持って、走った。
プリンターにつなぎ、印刷。
ガッ、ガッ、ガッと音がする。
父さんが俺のをのぞく。
「ごめん、勝手に作った」
「へー、さすがだな、でも外に漏らすなよ」
「うん、気お付ける」
爺ちゃんは資金計画や、いろんなことを話しているけど。
「父さん、いいの?」
「まったく、調子がいいと何でもやりたがるんだ。まだインドもどうなるかわからないのになぁー」
なんかおかしくて噴出しちゃった。
「お待たせしました、これです」
「こっちもできた」
ざっとだが、二十億、イケるかという。
は?なんだその金額‼国家予算級じゃね?
「初期費用です、電気も、何もない所なので」
そう言えば、俺はその綺麗な表紙のパンフレットを見た。
「日本からソーラーとか持って行くの?それだけですごい金額」
「なんかけたが大きすぎて、吐きそう」
彼は壮大な夢物語を話す、でも爺ちゃんはあくまでビジネス、利益が出ないものには、金は出せんという、当たり前だよな。
「これだけじゃあ」
「わかってます、あくまでも、今は打診だけです、彼と連携を取り、改めて、伺います」
凄い紳士的なこともできるんじゃん、まったく。
電話がなって、俺が出た。
「じいちゃん、久米先生から」
爺ちゃんは電話を取ると、話はじめた、俺は椅子に座ると、またパンフレットを取った。
「この国が無くなるなんて、不思議だな」
でも、地球は常に動いている、でも、彼らのは、世界的な人災なんだ、何もしないで、魚を取り、自生する物を食べて、それだけで生活していた人が、他の国の理不尽な仕打ちですむところを失くす。
この国もかつて、原爆の恐怖を味わった、一つは戦争で、二つ目は大国の実験の名目で。極めつけはこの国で起きた地震、ごみは海を漂い、この国はそれすら廃棄できないでいる。自然災害だけでは済まされない。
それで苦しんでいるほかの国の人がいるのを忘れちゃいけないんだ、だからこの国は残らなきゃいけない、先進国に見せつけるために。
何か、晴彦さんの家族に向けた怒りのような物に見えて、単純にすごいなではすませられないような位、あつく話してくれた。
爺ちゃんが席に着いた。
「早いところ撤退したほうがよさそうだ、つけいられない方がいい」
「そうですか」沈んだ声。
「海外、エンターティナー、接客・・・ねえ父さん、インドの店の中に飲食店を作るんだよね」
「ああ、そのつもりで動いてる」
「劇場も・・・」
「おい、ストリップなんかできないからな」
・・・ストリップ、ムフッ、それはいい考えかもな?
「は?何を、千弘、何するんだ?」
俺は上にそれをかいた。
サーカス、シルクドソレイユ、インド映画。
「従業員として、みんな連れていけばいい、三年修行、使い物にならなきゃ、どこに行っても失敗する、だったら、せめてマネージャークラスまで育ててやればいい。」
「お前簡単に言うなよ、その分の移動費なんかは」
「それは晴彦さんが出すよ、ね―」
「俺が?」
語学訓練、接客は世界レベル、ホストもホステスも、超一流のホテル。
「いいんじゃない?それだけで、目玉だよ」
「そりゃそうだけど、そんな簡単に、はい行きますって言うか?」
そうか、でも晴彦さんはこういった。
「男性四十名、女性三十名、頼めませんか?住居は、どうせ、社で作る寮になるんだ、共同生活でいいんです、お願いします」
「聿、現地調達か?」
「二年はスッタフを送り込みますが」
「何とか組み込め、ただし、使い物にならないときは捨てる!」
「はい、お願いします!」
晴彦さんはにやりと笑ったように見えた、何考えてんだー?
期間は二年、プロジェクトチーム、それに関する物は、本社に席を設ける。
「父さん、株主は」
「総会の時に話す、理事会を開く。典弘、理事に連絡、年末で忙しいだろうが、二十九日、本社に十時集合」
「はい」
兄貴が部屋を出て行った、隣の部屋へ行ったんだ。
「千弘、本社の空いてるフロア、二つほど部屋を用意しろ」
「はい」
俺も席を立った。一番大きなフロアを抑えるんだ。
俺たちはここまで、明日も早いから寝なさい、兄貴にもいってくれと言われた。
「千弘君、感謝」と手を合わせる晴彦さんに笑いながら「では」と頭を下げて部屋を出た。
後はじいちゃんと父さんが話しを詰めるだろう。
もう十二時じゃん、眠い。
それでも隣の部屋から携帯に電話、秘書のクマさんにお願いしたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!