第三十話 休息

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第三十話 休息

人の声がする、あー、怜と真の声 ん?うるセーナ。 目を開け、時計を見た、十一時、ひる?そう言えば、腹減ったな。 下に降りると、もう正月の飾り餅が見えた、正月の準備が整っているというところだ。 「おはよ、何騒いでんの?」「ちーにいちゃんおは」「おはって昼だぞ」 「母ちゃん腹減った」「もうすぐ御昼よ」 「あれ。マーたちは?」「外よ、そろそろ入って来るでしょ」 なにしてるの?怜と真は、焼き芋と言っている。 朝から落ち葉や庭の掃除で出た物を焼いているんだそうだ、まあすごい量だもんな。 顔を洗い、先に飯を食い始めた。 ぞろぞろと戻ってきた、リオに兄貴はと聞くと、昨日からホテルだそうだ、テレビに出ずっぱりになる。去年まではどうしてたんだと聞くと、事務所の社長さん所で年越しをしていたそうだ。 「芸能人も大変だよな」焼き芋はと聞く、まだだよ、そんなにすぐ焼けないという。 火は?じいちゃんとばあちゃんが見ているそうだ。飯を食ったら変わる、お前も来いと言われた。はいはい。 リオはだいぶ変わった、部屋に一日閉じこもることはうちでは皆無だ。朝から、母さんの手伝いに、怜の送り迎えは彼の担当になった。中学校にも行って来た、いろいろ手続きをして、冬休み中に、テストをして、卒業試験をすれば、彼は中学の課程を卒業する事となるそうだ。それに、マーも友達と彼を引き合わせたりと、外の環境にならして行っているから、高校にはいれば心機一転、彼も変わると思う、俺らの学園なら。 来年は、小学校に、高校生が二人と、又忙しい母さん、助かるわ―なんて言ってるけど、まあ、洗濯だけでも、大変なわけで。 「あと何回運べばいい?」「三回ってとこか」 「腰いてー」「俺たちは朝からやってんだぞ」 「わるかったよ」 案外乾いた枯葉はすぐに燃えるから、大量に燃やさないと、どれだけ芋を入れたのかはわからないけど、まだ一時間ほどは火を入れろとじいちゃんに言われた。ゆっくり、じっくり火を通した方がおいしんだってさ、あちこちに置いてあった枯葉の入った袋は今日の時のためにとって置いた様なもんだな。紙ゴミなんかも燃やすから、シュレッダーのゴミなんかは燃える、燃える。 「もう、ごみはない?」兄貴の部屋をのぞいた。今日は仕事で尚ちゃんしかいない。 「もうないよ」「ねえ、尚ちゃん」 「何?」「あのさ、こんなこと言うの悪いんだけどさ、ふとった?」 いやねーとバンと背中を叩かれた。 赤ちゃんが出来た。 「ほんと?うそー、まじで」 夏には生まれるよという。 凄い、兄貴、パパになるんだ。 なんか幸せそうだな。 俺は、まだだな。 ゴミはない、枯葉もほとんど燃やしてしまった。 ばあちゃんたちのところも燃やすようなものはないと、俺と一緒に外へ出た。 くすぶるように燃えるものをほうきで集め高くして、風を送ると、又赤い炎が上がる。 木の枝で、アルミホイルにくるまった物を取り出す、周りは煤と、焼け焦げたアルミホイルを取ると、そこには古新聞、何で新聞? 濡れた新聞紙をいもに巻いてからアルミホイルで巻くと、いいんだそうだ、新聞紙が焼けるか、かわいていたらいいらしい、甘いいい匂いがする。 「みんな出してもいいわよ」 どれだけ入れたんだろう、段ボールひと箱分、なんて言ってたけど。 焼けた?と言って、怜と真、それにいつの間にか来ていた西田んとこの兄妹が出てきた。 ばあちゃんが用意したざるに乗せていく。 「こんなに食えるか?」「食う!」「食べちゃうよ」 そうか? 後は、火を消して、それを、肥料を作っている所にかぶせておいてと頼まれた。 キッチンのテーブルの上に広げられた新聞紙の上にざるが置かれ、そこから湯気が昇っている、みんなが手を伸ばし、尚ちゃんの赤ちゃんの話にわく。 本当にうまい、久し振りに、焼き芋食べた。真の言ったとおり、無くなるのはや。 西田の所に持って行くかというとうれしそうにうなずいていた。 今は、怜や真のいい友達だ。夕方おねえちゃんが迎えに来るそうだ。 何にもない日、こんな日はこれから少なくなるんだろうな。 そう言えば、父さんどうした? 「いるわよ?そうだ、持って行ってくれる?」 何処?書斎?そうだと言われ、焼き芋とお茶を持って、応接室の隣にいった。 「入るよ」 「どうぞ」 にぎやかだったなという、西田の処の兄妹が来てあそんでると話した。 まだ熱い芋をハフ、ハフ言いながら食べた、うまい芋だなと言いながら。 規格外の熊本のサツマイモうまいさと言っておいた。 仕事、手伝おうか? これはいいといわれた、それよりゆっくり休んで、二日から忙しいからと言われたんだ。 「今年は雅弘も連れていくからな」 「そうなんだ」 スーツとか支度をしておけと言われた。 「マーのは?」 「母さんがしてるだろ」 「ぬけてっからな」 「そうなんだよな、見てきてくれよ」 わかったといって部屋を出て、二階へ。 「マー、スーツ来てる?」 「ウウン、何それ」 やっぱり、正月のあいさつ用、俺と一緒に出て歩く。 「知らないよ?」 「わかった、聞いてくるから」 今度は下に降りる、走り回る子供たちの間を抜け、母さんに、まだ食ってる。 「できてる、できてる、今持って行く」 「靴は?」 「下駄箱、あんたも出しておきなさい」 「へいへい」 兄貴のも出すか? 箱に入った新品の靴、でかくなったな。まあ、俺もそれなりだけど。 兄貴のも増えたなー、正月用、これだよな、父さんのは、磨くか? 玄関に広げたのを拭きはじめた。 「おや、靴磨き」 「ばあちゃん、爺ちゃんのもする?」 そうだねといい、靴の箱が重なっているのを見てる、増えた物は、箱に入れ、写真を貼ってあるんだ、それは俺たちが向こうの家でしてたことだったから。 「チーちゃん、あれと、これ、これも出してくれる?」 脚立に登り、これ?と言いながらおろしたのを渡す。 「雪駄、靴、これ?」 「その隣」 「これね、それと、これ?」 「そうそう、あら」 「何?わっ、真っ白」 「カビだわ」 何でと聞いたら、かわかないうちに片付けたんだろうという。 「どうするの?」 「どうって、ふきゃいいのよ」 「中は?」 「中も拭けばいいの」 ばあちゃんに聞きながら靴磨き、とにかく汚れを徹底してとれば、クリームなんて少しでいいのよという。 並んだ靴、ぴかー。なんかうれしいな。 ピンポンとなって、玄関を開けた。 「こんにちは」 「もうそんな時間か」 西田の妹が迎えに来た。何だろう、俺の方見て笑ってる?それぐらいで俺は二人を呼びに行くと、俺の顔を見てどうしたんだと笑いながら聞く。 鏡を見ろという、顔には、靴の黒いクリームがついていた。 それで笑われてたのか。 なんて、結構取れないな。 「チー、何してんだ?」 「これ、取れなくてさ」 何だこれと言って、顔からクリームを取る健 「油だな、絵の具か?」 靴用のクリーム。 それじゃあ、ダメだと、キッチンへ連れて行かれた。 「油、油、これでいいか」サラダ油、どうするんだ? 「油は油で落とす」それを指で付けたのをぐりぐり押し付ける。 「いいよ、自分でするよー」 少し浮いてきたけど、手にまでついて、タオルをとろうとすると、それを取り上げられた。 「何すんだよ」 タオルで拭いてもとれないの、と言って渡されたのは、ビニル袋。 「ハー?こんなので拭けって言うのかよ」 「いいんだよ、騙されたと思ってつかえ」 「こんなので取れるわけ…え?」 ガサガサと音がするし、こんなので取れる訳、鏡をのぞいた 「・・・とれてる」 「な?」 「すごい、指に着いたのもない、へー、凄いな」 「だろ、油絵やるからな、すげーだろ」 「へー、スゲー・・・商品化して売ろうかな」 「いいかも、売れるかわかんねえけど」 ねえ、油誰か持って行ったー! 「母ちゃんだ、おれ!今持ってく!」 「落ちたから石鹸で洗えよ」 「うん、サンキュー」 その後はだらだらとした時間があっという間に過ぎていく。 「おなら、おなら」 「怜、あんまりするとウンチでるぞ」 「えー、するなよ」 「しないよー」 「お、もう洗ったのか?」 そこに入ってきた父さん。 もうでるという二人。 俺も出る。 「マーとリオ君にも入れと言ってくれ」 ハーイというチビの声。 ほら静かにふたりの着替えを手伝っていると戸が開いた。 「お、もう出たのか?」 「兄ちゃん」 と抱き着く真。へー。 「父さんが入ってるよ」 それを聞いた兄貴がこう言った。 「父さんか、父さんねー」 それが何だか妙に聞こえた、なんだったんだ? まあそれはすぐわかった、兄貴は赤ちゃんの事をさっき聞いたらしい、それでか。 俺は早くベッドに入った。久し振りに家にて発見したことが多くて、なんだかそれがうれしい事や楽しいことで、幸せな気分になっていた、目を閉じると、もう俺はあのアパートの事を忘れかけていたことに気が付いていた。 時間が出来たら行ってみようと思っている間に俺は眠ってしまったのだった。
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