1-4

1/4
前へ
/255ページ
次へ

1-4

 昔。祖父とこんな話しをしたことがあった。 「未来には見えるか、悪霊の中に小そうくて黒い丸があるやろう?あれは妖魔や」  未来を狙って悪霊が近づいて来たときのことだ。  未来は悪霊を凝視した。  すると半透明の悪霊の体の中には無数の小さな黒い玉が、蠢いていた。 「見えるけど、気持ち悪いわ」 「そう言うなや。悪霊は可哀想なやっちゃよ」 「可哀想?」 「せや。悪霊は、元々は、じいちゃんと一緒。普通の霊やったんや。せやけど、あの黒い玉。妖魔が体の中に入って霊の魂を食ってるんよ」 「言ってる意味わからんわ」 「妖魔の餌はな。魂なんやよ」 「魂」 「せや、せやからあの黒い玉は、霊の体に入り、内からゆっくり。ゆっくり魂を食いよるん。そうなると、魂は徐々に我を忘れて、悪霊になってまうんよ」 「霊が、あの。黒い玉に食われているん」 「せや。妖魔はそう言う奴らや」 「いややわ。気持ち悪いし怖い。それに悪霊は好かん。うちを狙って近づいて来よる」 「せや。未来は魂が強いからや。あれは悪霊が未来を襲おうしてるんやない。悪霊の中の妖魔が、霊を操っているんよ」 「どう言うこっちゃ?」 「未来を、おまんまやと思ってるんや。未来は魂が強い。どうしても魂が強いと体から洩れて待って、妖魔が寄って来よるんよ。せやから悪霊も未来を狙う」  悪霊は未来をしっかり見据えている。  未来はぞっとした。自分が食べられる想像をして恐怖する。 「妖魔はどこから来よるん」 「さてな。わからんのやよ。わかっているのは妖魔は魂を喰うことだけ」 「魂やったら、じいちゃんも狙われるんとちゃうの」 「せやな。じいちゃんは魂だけの存在やから。奴等から見たら餌やな。じいちゃんが妖魔に魂喰われたら、悪霊になってまうな」 「そんなのいやや。うちがじいちゃんを守る。強なって、じいちゃんから妖魔を守る。悪霊なんかさせへん」  祖父は、ふふっと柔らかく笑った。  悪霊を見かけると、そのときの記憶が蘇る。 ──だから。  「あーなんかおるな」 「おるね」
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加