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1-4
昔。祖父とこんな話しをしたことがあった。
「未来には見えるか、悪霊の中に小そうくて黒い丸があるやろう?あれは妖魔や」
未来を狙って悪霊が近づいて来たときのことだ。
未来は悪霊を凝視した。
すると半透明の悪霊の体の中には無数の小さな黒い玉が、蠢いていた。
「見えるけど、気持ち悪いわ」
「そう言うなや。悪霊は可哀想なやっちゃよ」
「可哀想?」
「せや。悪霊は、元々は、じいちゃんと一緒。普通の霊やったんや。せやけど、あの黒い玉。妖魔が体の中に入って霊の魂を食ってるんよ」
「言ってる意味わからんわ」
「妖魔の餌はな。魂なんやよ」
「魂」
「せや、せやからあの黒い玉は、霊の体に入り、内からゆっくり。ゆっくり魂を食いよるん。そうなると、魂は徐々に我を忘れて、悪霊になってまうんよ」
「霊が、あの。黒い玉に食われているん」
「せや。妖魔はそう言う奴らや」
「いややわ。気持ち悪いし怖い。それに悪霊は好かん。うちを狙って近づいて来よる」
「せや。未来は魂が強いからや。あれは悪霊が未来を襲おうしてるんやない。悪霊の中の妖魔が、霊を操っているんよ」
「どう言うこっちゃ?」
「未来を、おまんまやと思ってるんや。未来は魂が強い。どうしても魂が強いと体から洩れて待って、妖魔が寄って来よるんよ。せやから悪霊も未来を狙う」
悪霊は未来をしっかり見据えている。
未来はぞっとした。自分が食べられる想像をして恐怖する。
「妖魔はどこから来よるん」
「さてな。わからんのやよ。わかっているのは妖魔は魂を喰うことだけ」
「魂やったら、じいちゃんも狙われるんとちゃうの」
「せやな。じいちゃんは魂だけの存在やから。奴等から見たら餌やな。じいちゃんが妖魔に魂喰われたら、悪霊になってまうな」
「そんなのいやや。うちがじいちゃんを守る。強なって、じいちゃんから妖魔を守る。悪霊なんかさせへん」
祖父は、ふふっと柔らかく笑った。
悪霊を見かけると、そのときの記憶が蘇る。
──だから。
「あーなんかおるな」
「おるね」
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