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 悪霊が、未来を見つけてニヤリと笑った。餌と認識したようだ。  ですよね。  悪霊の近くを、小さな子供を連れた親子が歩いていた。母親は子供に歩く練習をさせている。  母親は子を地面におろし、1メートル離れた所で子供を呼んだ。子供はヨチヨチと歩いて、母親の元に向かっていた。  そこに、悪霊が向かって来た。  子供をすり抜け、母親もすり抜ける。  未来目指して一直線だ。  子供が、小石で足を捕らわれベタンと転んだ。途端に、わっと泣く。 ―私はもう弱くない。  未来はパンっと両手を祈るように手を合わせた。  幼いころなら、今頃、泣いてじいちゃんを呼んでいただろう。  しかし。  風が四方八方から通り過ぎ漆黒の髪が頬を掠める。  手から金色の砂塵の粒が淡い光を放ち、丸い形へと形成されて、未来の体を覆い包んだ。 「結」  シャボン玉の様な不思議な色を帯びた直径二メートル内の透明な幕が構成された。  これは未来が覚えた結界の術。  よし。完璧。 6b2d4838-c8af-43d5-be55-b064a4cb9268  悪霊は未来の前をすり抜け、立ち止まった。  キョロキョロと未来を探している。  未来の強い魂の気配が結界によって消えたからだ。  人の魂は器(体)によって守られている。しかし、未来のように魂が強い物は器に入りきらない。そのため、魂が器から洩れて悪霊。つまり妖魔に見つけられるのだ。 ―私は強くなった。  自分の身くらい自分で守れる。泣いてるだけの子供はもういない。  これからは守られる側じゃない。大切な人達を守る側になるんだ。  じいちゃん。私。強くなったよ。  悪霊は、血の涙を流し「腹が減った」とブツブツと呟き林の奥へと歩いて行った。  子供の泣き声が、わんわん聞こえた。  母親は、子供を抱きかかえ、一生懸命あやしている。  ここには、変わらない日常があった。
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