1人が本棚に入れています
本棚に追加
新しい物語
「ったく。いつまでもメソメソすんなって」
ティッシュを引き抜き、あたしの涙をごしごしとこする北斗。
「嬉しさ半分、寂しさ半分。ものすっごい複雑な気持ちなんだもん!!」
手を繋いで歩いていく二人を隠れて見送った後、あたしと北斗は図書館に戻ってきた。
みやびちゃんとゆずかちゃんがいなくなった館内はなんだかガランッとしていて静かで物悲しい気持ちになる。
でも、嬉しかった。
幸せそうに笑い合うあの二人を見られたことが。
「ていうか、ずっと聞きたかったんだけどどうしてゆずかちゃんのことあたしに教えてくれなかったの??」
ゆずかちゃんはあたしと北斗の姿が見えていた。
ということは、誰かがゆずかちゃんに本を貸し出したということ。
そんなことをできるのは、北斗しかいない。
よくよく考えれば、おかしい点はいくつかあった。
なぜか北斗はゆずかちゃんがピンチの時にもそれをいち早く察知していた。
北斗の言葉を思い出す。
『俺も協力する。一人じゃできないことも、二人ならできることだってあると思わないか?』
北斗は全部知ってて私をけしかけるようなことを言ったんだ!!
優しい言葉で私と手を組もうとしていたのはそのためだったの!?
「北斗って……腹黒」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、なんにも」
「それならいいけど」
明らかに不満げな表情の北斗。
ぼそっと言ったのに、聞こえていたみたい。
相当な地獄耳だ
「そうだ、これ」
北斗はあたしにみやびちゃんの本を差し出した。
「棚に戻して」
「うん」
棚に一つだけ空いている部分を見つけてそこに本を戻す。
すると、本はキラキラと輝き背表紙のみやびちゃんの名前が消えた。
「え……?」
背中を向けて歩き出した北斗のあとを慌てて追いかける。
「これで解決だな」
横に並ぶと北斗はふっとやわらかい笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!