器屋（うつわや）

「器屋」で器を交換した俺は別人になった。
ビニール袋をなかなか開けられない、という時は
スーパーのＢＧＭを頭の中で歌いながらのんびりと袋が開くまでの時間を楽しもう。

床に落ちた小さなゴミを誰も拾わない、という時は
俺が拾えばいいんじゃないか。きれいな方がみんな気持ちいいだろう。ははっ！

両手が塞がって、額を流れる汗を拭けない、という時は
汗が流れるからなんだというんだ。新陳代謝が良くなって体が喜んでいる証拠だ。

時間に余裕がないのに、玄関の靴が散らかっている、という時は
いま揃えなくても何も起こらない。時間に余裕のある時に揃えて、その時についでに掃除もしてしまえばいい。

約束をしたのに時間に遅れてくる人、というは
何か言えないようなことが起きてる場合もある。やむを得ないっていう言葉もあるからな。

そうやって、一つ一つ引っかかっていた事柄がなくなっていった。
そしてあの理想的な彼女も手に入れることができたんだ。
俺は良い人生を歩んでいる。毎日楽しいんだ。スキップはしないけど。