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そういうことだったのか。
「え? 器屋のこと、知ってたの?」
「やだー。当たり前じゃない。知らない人のほうが少ないでしょう? 私は、あなたとの将来を失いたくなかったから、私の器をもっと大きいものにしてもらったの。でも、あなたは本当によく我慢してくれたわ。今はもう、我慢になんかなってないでしょう?」
そういえば、最近は掌に忍耐という文字を書かなくなっていた。それに、我慢を我慢と思わなくなっていた。
「お客さん、私のことも毛深い小男とか心で思わなくなりましたれしょう。小さな器は、許さないという気持ちを持ち続けないといけない、ある一定のお客様に需要があるんれしゅ。それも辛いことですが、まぁ事情があるんでしょう。
希少な器を製造してくださるお客様の性質が変わってしまったのは商売人としては残念でしゅが、お得な幸せな人生を歩めましゅよ。きっと。こちらの店舗は今日でたたみます。この辺には希少な器をお持ちの方がいなくなってしまったのでね」
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