器屋(うつわや)

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古びた商店街の破れたアーケードをくぐる。 大きな狸の置物が寂れた看板を持っている。 狸は古いけどピカピカに磨かれている。 そこに好感がもてた。 「器屋(うつわや)」 「あなたのイライラ買取ります」 なんだこれ?  イライラなんて日々量産中だ。イライラが売れるもんなら全部買い取ってほしいもんだな。 興味本位で店に入ってみる。 狸がピカピカだろうから、店もきっとピカピカに清掃されてきちんとしているだろう。 カランケランコランキランコロン 扉に変な鈴がついていて変な音がする。 なんだよこれ、うるさいな。 長く鳴るし。 開けるたびにいちいち鳴るのかよ…。 「どうぞいらっしゃいました。 イライラ、してますか。いい感じです」 毛深くて舌たらず。独特の話し方。50代くらいの小さなおじさん。 髪の毛量多すぎ。でもキチンと整えては、いる。 「イライラの買取りでしょっか」 「えー。はい。…というか、イライラって買取できるもんなんですか?」 「はい」 店主は「え? 何言っちゃってんだろ」といった風に。当たり前だよね? 的な顔つきで言った。 
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