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俺のちょうど胃のあるあたりから小さな盃ほどの器が、にゅっ と出現した。
「お客様、かなりの貴重なお品をお持ちです。これほどの品はなかなか…はいー」
店主はほくほく顔で俺から出た器を回収した。そしてカウンターにあった平べったい器を両手で下から恭しくもちあげると、俺の胃のあたりへ にゅるっ とさしこんだ。
「この器は標準的な器になっております。大きさは標準で底が浅いですが、底を深くも浅くもできる仕様です。器についてなにかご質問はありますか?」
「いや…。特には…」
「では、お客様の器の買取価格ですが、とても貴重なお品ですので、八万円でいかがでしょうか? 末広がりの八で、縁起もよろしゅうございましゅ」
「八万円もいただけるんですか? それはありがたい。ぜひともよろしくお願いいたします」
俺はなんだか気分が良くなって、快く代価を頂戴した。
「ありがとうございましゅたー」
カランケランコランキランコロン
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