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花火の約束 P.1
今年の夏もあともう少し。この夏が終われば、もうみんなとは過ごせなくなる。来月から1人だけ都会に行ってしまう僕は、今までたくさんの思い出を共に過ごしてきたあいつらに、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だから、今年の夏祭りだけは4人で行かないようにしよう。そう思っていたのに、今日この日まで言い出せずにいた。
「遅せーぞ、音耶!いつもは誰よりも早く来るのに、一体どうしたんだよ?」
「ご、ごめん、遼。待たせて」
「音耶、遼のことは気にしなくていいよ!こいつは、こういう時だけは誰よりも早く来るんだ」
「うっせぇぞ、珠漓!お前がいつも遅いから、ここでみんな待つハメになるんだよ!!」
「遼くん、珠漓ちゃん。音耶くんと過ごせる最後の夏祭りなんだから、仲良くしようよ」
「ばっ、菫!それ言っちゃダメだよ・・・!」
そう。この3人、佐渡遼,神崎珠漓,桐生菫と過ごすのは今年で最後だ。小学校の時からの幼なじみで、中学3年生になる今までずっと一緒に過ごしてきた。でも、それも今年で終わり。早く言わなきゃ、菫に言われたままで終わってどうする。
「気にしないで、珠漓。今日はそのことで、話したいことがあったんだ。今年で最後だからさ、今日の夏祭りは4人で過ごすのやめない?」
「えっ、ちょ、音耶、何言って―」
グイッ。バキッ。ドサッ。
「きゃあぁぁ!ちょっと、遼くん!!」
ガシッ。
「遼、何やってんだよ!!」
「音耶、てめぇ!それ本気でいってんのか!?本気なら、もうお前とは親友やめるぞ!!」
「だって、最後の夏祭りなんだよ!?最後なのにみんなで過ごしたら、過ごしたら・・・」
ポタッ。ポタッ。ボロボロ。
「みんなと離れるのが、余計に辛くなるだけじゃないか・・・」
「音耶くん・・・」
「音耶・・・」
「・・・っお前っなぁ!お前が、お前が泣いちまったら何も言えねぇじゃねぇか・・・」
今まで泣かなかったのに。今日だって泣かないつもりだったのに。みんなを前にすると涙が止まらなくなってしまう。都会に行くのは、僕自身の意思じゃない。だから、余計に辛いんだ。
「ヒック、ヒック・・・。グスン。ごめん。だから、もう今日はこれで―」
「最後だから、一緒に過ごすんじゃねぇのか?」
「えっ?」
「そうだよ、音耶。最後の夏祭りだからこそ、一緒に過ごす意味があると思う」
「そうだよ、音耶くん!そんな悲しいこと言わないでよ」
「みんな・・・」
「ばっ、お前!また泣くなよ!?」
「遼。お前はまず音耶に謝れ」
「あ!みんな、もう花火の時間になっちゃいますよ!早く行きましょ!」
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