第1話 stars-in-stones

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 おばあちゃんが教えてくれたのだが、そのピアノはママが初任給で買ったのだそうだ。そのピアノはママの遺品として処分できず、今はしゅんくんの部屋の押し入れで眠っている。 「僕もまた君みたいに弾けたらなぁ」  多岐さんはぽつりと呟いた。多岐さんもピアニストだったらしい。数々のコンクールで賞を受賞し、プロを目指していたが、ある日指が動かなくなり、ピアノを弾けなくなってしまった。病院でジストニアと診断され、ピアノを諦めざるを得なくなったが、それでもピアノを近くに感じていたいから、とこのピアノカフェをつくるに至ったのだそう。 「そうだ、君たち、ここでバイトしないか」  ふと多岐さんが言った。それで、玲と2人で、ここでバイトすることになったのだ。  それから、高校卒業と同時にバイトを辞めた今でも、多岐さんは僕を招待してくれるのだ。玲も、2年生から同じクラスだった中西(なかにし) 佳斗(けいと)を連れて時々来ている。玲は今は私立月雅(つくが)総合大学の薬学部にいて、佳斗は"daisy(デイジー)"という服屋に就職している。ママの勤め先もここだった。
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