アメちゃん爆裂拳!

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アメちゃん爆裂拳!

 つかのま幸せそうな顔をしてた蘭さんだけど、ハッとしたようすで我に返った。ちょっとすねた目でこっちを見てる。  アコギーなロランはもっとアメちゃんが欲しそうだ。  アメちゃんをあげますか?  あっ、テロップにうながされた。よし! なげるよ。 「ほれ!」  僕のころがしたアメちゃんを、そおっとひろって、ササッとあとずさる蘭さん。  か、可愛い! 挙動がノラ猫!  ムグムグムグとアメちゃんをほおばったあと、またまた蘭さんはふりきるように頭をふった。でも、未練たらしげにこっちを見てる。  アコギーなロランは物欲しそうにアメちゃんを見ている。  アメちゃんをあげますか? 「ほれ、ほれ、ほれ!」  ブラックドラゴンのとき、千粒くらいなげたような気がする。ということは、ラスボスはそれを上まわる数のアメちゃんが必要なはず。  見ため蘭さんだけど、どうもアコギー本人っぽいし、ここは勝負だ。僕はザラザラとアメちゃんを両腕にかかえて、蘭さんの足元に置いた。  蘭さんは油断しないぞって顔をしてるけど、アメは手にとる。よし。食いついてるぞ。これはもうノラ猫の餌づけだ。 「ほら、ほら、ほら、美味しいアメちゃんですよぉ〜。怖がらなくていいからねぇ」  両手にアメちゃんかかえて、何往復もする。  アメちゃんに没頭する蘭さん。夢中になりすぎて虫歯にならないでね? 「ほれほれほれ」 「ムグムグムグ」 「ほれほれほれほれ」 「ムグムグムグムグ」  むう。やるな。さすがはラスボス。百粒や二百粒では満足してくれないか。 「じゃあ、これでどうだ! ワアアアアアアアアアアアー!」  僕は蘭さんのまわりで大声を出しながら走りまわった。とたんに蘭さんはアメちゃんにうずもれる。 「ムグムグムグムグムグムグムグムグ……」  ああっ、幸せそう!  ほっこりしてる蘭さんも可愛い。 「この戦い、兄ちゃんいらなくないか?」 「猛はだまってて」 「かーくんが相手にしてくれない……兄ちゃんも女神さま探して、口から雷おこし吐けるようにしてもらおうかな」  猛がゴチャゴチャかまって攻撃してくるけど無視だ。 「ワアアアアアアアアアアアー!」 「ムグムグムグムグムグムグムグムグ!」 「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアー!」 「ムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグ!」  ハアハア……ちょっと息ととのえて。 「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!」 「ムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグ!」  あっ、なんか、蘭さんの必死感が感じられる。これは可愛いぞ。手乗り蘭さんだ!(意味不明) 「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!」 「ムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグ……ムグ……ムグムグ……」  むむ。ちょっと苦しそうになってきた蘭さん。もうひとおし! 「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー! もひとつオマケに、ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!」 「ムグムグムグムグムグムグムグムグムグムグ! ムグムグムグムグムグムグ! ムグ! ムグムグ……ムグムグ……ムグ……ムグム…………もうムリ……」  涙目の蘭さん。  ヤッター! 勝ったー!  アコギーなアーティが仲間になった!  ん? ちょっと待って、テロップさん。今、なんと言いました?  アコギーなアーティが仲間になった! と、申しましたが? 「アコギーなアーティ?」  アコギーなアーティ。 「アーティ。どっかで聞いたことあるな」 「ああああああー!」と大声あげたのは猛だ。 「兄ちゃん。耳が痛い。雷おこし出るわけじゃないんだから、耳元で叫ばないでよ」 「アーティだよ! アーティ。おれの依頼人が探してただろ?」 「えっと?」  僕らの見てる前で、蘭さんの姿が変わる。同時にローブや手袋がポロン、ポロンと床に落ちて、そこにいたのは……。 「……スライム?」 「クリスタルスライムだ!」  なるほど。妖精の谷にいた、水晶みたいに透明でキレイなスライムだね。
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