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完璧イケメンくんも、意外と悩みがあるらしい。(3)
「いなくなっちゃったね」
「今回の反応も、口裂け女的に予想外だったのかもしれないな」
「この場に心霊系ユーチューバーとかいたら、話がさくさく進んだのかも?」
「死亡フラグを立てるのはやめろ」
「とはいえ、どういう反応をするのが正しいのかわからないからなあ」
正直、携帯もネットに繋がらないし、調べようがないのでお手上げだったりする。
「まあまあ、ここは糖分を摂取して……あ!」
「なんだ」
「口裂け女ってべっこう飴が好きだった気がする!」
「お前、自分が飴を食べているから適当な思いつきで言ってないか」
「言ってないって」
私が持っていた飴は、紅茶味とべっこう飴の2種類が入っているのだ。……べっこう飴味って何味よ?
「なんで口裂け女はべっこう飴が好きなんだ?」
「さあ? 確証ないから、使えない?」
「そんなことはない。とりあえずここから出るためには口裂け女とまた会わないといけないんだろう。そうじゃないと、あいつが俺たちの前に出てきたんだ理由がわからなくなる。頑張って捕まえてみるか」
そういうわけで私たちが作ったのは、口裂け女を捕まえるための罠だ。材料は、べっこう飴、棒切れ、そこら辺で拾ってきた大きめのカゴ。これ、あれだよね、日本昔ばなしでよく雀とかを捕まえる時に使う罠だよね。
「古典的な罠過ぎる」
「他に材料もないし、捕まったらラッキーだろ」
こんなバレバレの罠なんて、今時雀だってひっかからないと思う。でも衣笠くんがそういうなら、そんなもんかも?
「じゃあ、口裂け女が捕まるまで時間もあるし、ちょっとおしゃべりでもして時間を潰そうか」
「あれで捕まるって納得できるお前ってすごいな」
言外に馬鹿って匂わしてくるのやめてくれる? ムカつくから、今まで聞かないでおいてあげた質問をぶつけてやる。
「なんで、ここにお参りに来たの?」
その瞬間、とても嫌そうな顔をした。そうそう、衣笠くんのその顔が見たかったんだよね。たぶんアニメの悪役とかって、こういう気持ちなんだろうな。無性に高笑いがしたくなってくる。
「さっきさ、俺の家って代々医者の家系って話しただろ」
「うん」
「だから、親も当然俺が医学部に進学することを当然だと思っててさ」
「ほう」
「俺の興味があることを話しても全然聞いてくれなくて、正直しんどい。父さんたちは、俺のことをなんにもわかってくれないんだ。周りに相談しても、気分転換にデートでもとか言って付きまとわれてさ」
憂いを帯びた瞳。こんな雰囲気で愚痴をこぼされたら、女の子は「私が守ってあげなきゃ」とか「支えてあげなきゃ」とか張り切っちゃうんだろうなあ。ま、私はそんなことないけどね。だから、ずばっと言っちゃうぜ。
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