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神さまにかかれば、ラジオも神具になるらしい(2)
「それで、神さま。これで試練は終了ということでいいですか?」
よくわからないけれど、試練を出した張本人が出てきているんだから確認しておこう。この神社に閉じ込められてから、そう長い時間は経っていないと思うけれど、ちょっと心配だし。外に出たら捜索願が出された後だったとか、本当に洒落にならない。
「そのつもりだったのじゃがの」
「そのつもりだった?」
あれ、この流れってちょっとマズくない?
「このまま終わってしまっては、妾がつまらぬのでな」
「いや、試練に面白さは必要ないっていうか。だいたいさっき、『ほんにそなたたちは、面白いのう』って言ってたじゃないですか」
「いささか手ぬるいものではあったが、試練はあれで終わりと言えば終わりじゃ。じゃから、これはおまけのようなものよ。そなたが勝てば、そなたらにとって良いようにとりはかってやろう」
「負けたら?」
「なあに。もうしばらく、妾の相手をしてもらうだけのこと」
神さまのいう「もうしばらく」ってめちゃくちゃ信用できないっ。これはうっかり負けてしまうと、竜宮城で300年暮らした浦島太郎みたいなことになってしまうのでは?
速攻で断ろうとしたけれど、神さまの中では最初から「おまけ」はやることで決まっていたらしい。パチンと指を鳴らされると同時に、境内の景色が変わった。
……あれ、ここって学校じゃない? しかも、いつも授業を受けている自分のクラスの自分の席だ。
遠くから、神さまの声が聞こえる。
「こちらにふたりの男がおるでの。好きな方を選んでおくれ」
「それだけ?」
「それだけじゃとも。どちらを選んでも、そなた好みのイケメンじゃて」
はあああ、何でここに来て妖怪とか都市伝説関係なく、イケメンを選ぶ話になるんですかね? 大体、私には心に決めた橋口先生っていう大事なひとが……。
「中西、補習の課題は解き終わったのか」
「へ?」
橋口先生がいた。しかもなぜか私の隣に座る形で。深く息を吸えば橋口先生の良い匂いを家に持ち帰れそうなレベルの近さだ。というか、マンツーマンの指導でも普通は隣じゃなくって正面からするだろ。
「また、ぼんやりしていただろう。補習は出れば終わりじゃないんだぞ。追試で合格点に達しないと」
「合格点……」
呆れたといわんばかりの表情が、いつもよりうんと柔らかい。授業中に先生が私を見るときは、手を焼いている厄介な生徒だからだろう、たいてい苦み走った顔をしているのに。
「まったく、ご褒美で釣って勉強させるのは良くないんだがな」
「先生がご褒美なんて単語を言うと、なんかえっちですね」
「中西……」
しまった。思わず本音が! はあとひとつため息を吐いた先生がふっと笑った。ふええええ、なんで笑った? しかもネクタイを緩め、私の肩に手を添え、そのまま近づ……えええええええええ、顔が近い近い近いいいいいい!
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