私の好きなひとには、大切な女性がいるらしい。(2)

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私の好きなひとには、大切な女性がいるらしい。(2)

「わーん、今日も先生と彼女のらぶらぶな話を聞いてしまった。辛いいいい」  昼休み。私はお昼ごはんを食べながら、親友の前で弱音を吐いていた。ちなみにキリッと美人系の彼女にも彼氏はいないが、それは彼女が3次元の男を相手にしていないだけだったりする。つまり、OKさえ出せばよりどりみどりの美人さんなのだ。ちくしょう! 「じゃあ、聞かなきゃいいでしょう。そもそも話を振ったのはあんたでしょうに」 「でも先生の『彼女さん、大好き』って顔を見ているのが幸せ過ぎるんだもん」 「そりゃあ結婚を約束している相手なら、顔も緩むってもんよ。むしろ付き合い長そうなのに、いまだに結婚してないというのが不思議なくらいだし」 「ひーん」  正論すぎる言葉に、もうノックアウト寸前です。すみません、許してください。今日のお弁当は購買で買ったクリームパンのはずなのに、なんだか涙のせいで口の中がしょっぱいぜ……。 「あの左手の指輪を見てみなさいよ。相当長いこと嵌めてないと、あんな風にならないわよ。ずっと付き合ってきた彼女と、ぽっと出の教え子。比べるのが間違い。しかもうっかり何かの間違いで手を出したら犯罪なんだから。あんたは好きなひとが逮捕されてもいいわけ?」 「それは嫌だけど! でも理性で諦められたら苦労しないよおおおお」 「その年齢で略奪愛を希望するとか、発想が終わってるわね」 「ぐええええええ」  やめて、私のライフはもうゼロよ。  先生を略奪したいわけじゃない。先生の彼女を傷つけたいわけでもない。でも、好きなひとに少しでも関わりたいと思ってしまうのは仕方がないことなんだってば。 「だって、このぴちぴちの体からほとばしるリビドーがね!」 「じゃあそんな『バカわいい』ひまりに教えてあげようかな」 「へ?」 「学校裏の寂れた稲荷神社、あそこって昔から()()()()噂があるの知ってる?」 「っていうか、学校の裏に稲荷神社なんてあったっけ?」 「あんた、そういうのに一切興味がないもんね」 「いやいや、方向音痴だから覚えていないだけで、都市伝説とかは好きだよ。楽しくて」 「なら、ちょうどいいわね」  にっこり笑顔の親友は、私に両手を差し出したままで固まった。なんだこれ。 「この手はなに?」 「まさかタダで聞こうってつもりじゃないでしょうね?」 「お金取るの?」 「うふふふ、お金じゃなくって体で払ってもらおうかしら」 「な、なんて、えっちだ!」 「誰があんたとえっちなことするって言ったの。しっかり肉体労働してきてちょうだい」  てのひらの上に乗っていたのは、なんとも無骨な機械たち。一体いつの間に、どこからだしてきたんだろう。 「なに、これ……?」 「情報を教える代わりに、実際に体験してきてほしいの。この機械で録音してきてね」 「え、行くか行かないか考えさせてくれないの?」 「あんた、考える余地があるの? 行けば、先生との仲が多少発展する可能性だってあるけれど、今のままじゃ一生相手にしてもらえずにフェードアウトよ」 「つらっ」  実際に親友の言う通りってところが辛い。私がこの学校を卒業しちゃったら、先生は私のことを忘れてしまうんだろうなあ。 「背に腹は変えられない。聞くわ!」 「そうこなくっちゃ」  なんか完全に嵌められたような気もする!
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