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神さまにかかれば、ラジオも神具になるらしい(6)
「お前たち、なにを騒いでいるんだ」
「あ、橋口先生。今日もとってもイケメンですね。出来の悪い生徒を見つめるその塩対応な眼差しが安心感ありまくりです」
「なにを突然拝んでいるんだ。即身仏じゃないんだぞ」
「ああ、ありがたやありがたや」
妄想の中の先生は確かに美味しかったけれど、やっぱり本物の先生が一番だよ。ただ、なぜか唇の横がちょっと切れて腫れてるのが気になります。わざわざ言うことでもないし指摘しないけど。彼女さんと喧嘩でもしたのかな。
「それは、町内の地図か?」
「そうなんです。ひまりが、放送部のラジオドキュメントの取材に協力してくれなくて困ってるんですよ」
「だって、わざわざ怖いところを回る必要性ないじゃん」
ふむと考え込んだ先生が、いいことを思い付いたと言わんばかりの笑顔を見せた。
「夏休み中はおそらく、国語か日本史の課題としてレポートが課されるはずだ。だから、国語なら短歌や俳句と絡めて、日本史なら郷土史に絡めて調査してみればいい」
「確かにどの心霊スポットも、市や県の文化財として登録されているわね」
「それに、この辺り一帯は例の男子高の活動範囲とかぶるからな。LIMEIDを交換し損ねた王子さまにも再会できるんじゃないのか」
「へ?」
「まったく、お前たちはアオハル真っ盛りで羨ましいよ。先生の青春は一体どこへ行ってしまったのやら」
「いや、違いますから。先生、誤解なんです!」
「わかった、わかった。誰にも言わないから、早く見つけ出してくれよ」
「誤解なんですううううう」
「待ちくたびれて、拗らせていても知らんからな。童貞は拗らせると面倒臭いぞ」
え、今先生の口からとんでもない発言が聞こえたような気がしたんだけれど、どういう意味なの?
むしろ先生が拗らせていた過去とかあるんですかね? それはやっぱり彼女さん相手ってことですよね? 教えてくださいいいいいい。
先生の指輪がきらりと光る。同時に私の薬指もじんわりと熱を帯びた。末期症状だな、こりゃ。
そういうわけで、お稲荷さんにお参りした願いごとの結果はよくわからないまま。暑い夏はさらに暑さを増していく。
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