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私の好きなひとには、大切な女性がいるらしい。(4)
「ちなみに、録音したものって何に使うつもりなの?」
「来年のMHK杯全国高校放送コンテストに出品しようと思って」
「はあ、何それ?」
「放送部のインターハイみたいなやつ。ラジオドキュメント部門があるから、ちょうどいいと思うのよね」
「MHKだよね? お堅いところに、そんな都市伝説なんてぶっこんでいいの?」
万が一都市伝説の内容が録音できたとして、完全に昼下がりのワイドショー並みに下卑たものになるんじゃないの?
「使うときには多少アレンジするし、あまりにも突拍子のない内容だったら、ラジオドラマ部門に応募するから大丈夫!」
「適当過ぎる! っていうか、やだ、自分の声が全国に流れるの? 無理、恥ずか死ぬ」
「全国に流すつもりだなんて気が早いわね。まずは県大会で上位入賞しないと、全国大会になんて出れないわよ」
「むしろ、県内の知り合いに聞かれる可能性があるなんてイヤ過ぎる!」
「あ、その機材って結構な金額になるから、落としたりしないでね」
「え、いくらくらいするの?」
「えへへへ、内緒。あ、むしろ壊したあとに最新型に弁償してくれてもいいわよ?」
「ねえ、その両思いになれる噂って本物なんだよね? 私を嵌めたりしないよね? 私たち、友達だよね?」
思わず確認する私の横で、親友がにんまりと笑った。こういうときのこの子の表情、美人だからこそ怖いんだよ。なんかさ、神がかってるんだもん。
まあそういうわけで、私は放課後に噂のお稲荷さんに行くことに決めた。
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