噂の稲荷神社には、神さまの試練があるらしい。(1)

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噂の稲荷神社には、神さまの試練があるらしい。(1)

 放課後、教室に残って宿題を解いていると声をかけられた。思っていたよりも集中していたみたい。気がついたら、窓の向こうは茜色に染まっている。 「中西、まだ残っているのか」 「あ、先生。そうなんですよ。部活に行った親友待ちしていて。彼女が帰ってきたら、下校しますから」 「そうか……」  少しだけ遠い目を何か考えている橋口先生。先生、まさか私に友達がいることを疑っていませんかね? いやだなあ、ぼっちじゃないですよ。……親友、遅いけれど私のことを置いて帰ったりしていないよね? いつも一緒に帰ってるもんね? な、なんか急に不安になってきた。 「手に何か書いてあるが、買い物か?」 「ぎゃー!」 「見られて恥ずかしいものなら書いておくな。なんだ『いなり寿司』に『油揚げ』? お母さんに頼まれたお使いか?」 「ばっちり見られているし!」 「まあなんでもいいが、あまり遅くならないうちにちゃんと帰るように」  ぽんぽんと頭を撫でられて、叫び声をあげたくなった。なにそれ、不意打ちとかずるすぎるでしょ。バカ、バカ。女子高生の気持ちを弄ぶ悪い教師め! 「中西、お前はおっちょこちょいだからな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()」 「幼稚園児じゃあるまいし、大丈夫です!」  先生が教室から出て行くのを見送った後、ふと窓の外を見たら親友が校門を出て行くところだった。ぎゃー、置いて行かれた! いや、気を使ってくれたのかもしれないけれど、せめて途中まで一緒に帰ってもらわないと、私、ひとりで学校の裏手にあるとかいう神社に辿り着けないよ!
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