噂の稲荷神社には、神さまの試練があるらしい。(5)

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噂の稲荷神社には、神さまの試練があるらしい。(5)

 結果として、ここから出られないし、どこにも連絡がつかないことが判明しました。消防や警察とかってかけたことがないから、ドキドキしたよ。結局繋がらなかったんだけど。 「はあ、お腹空いたなあ。あ、飴とか買ってたんだ! 食べる?」 「空腹を感じる神経の図太さが羨ましい」 「ひとりだったら怖かったかもしれないけどさあ」 「……やけになって、俺のことを襲うなよ?」 「それ、普通は女子が心配することじゃない? まじでなんなの?」  いかんいかん、お腹が空いているとひとはイライラしやすくなるんだよね。会議は午後からやれって、テレビでも言ってたし。慌てて買っておいた飴を口の中に放り込んだ。 「また、チョイスが渋いな」 「50年変わらない美味しさのキャンディになんてこと言うのさ。見た目だって水晶みたいで、すごくキレイなのに」 「飽きさせないように、メーカー側が毎年マイナーチェンジしているに決まってるだろ」 「もうごちゃごちゃうるさいなあ。とりあえず食べなよ。どっちにする?濃い色? 薄い色?」 「味じゃなくて色で選択なのか?」 「どっちも美味しいから、食べ終わったら違う色にすればいいじゃん」 「まさかとは思うが、それぞれの色で選別している理由は、味の違いがわからないからってわけではないんだな?」 「とりあえず、どっちも美味しいよ!」 「聞いた俺がバカだった。薄い色の方のキャンディをくれ」  糖分を吸収しながら、がんばって友好的に振る舞ってみる。 「じゃあさ、まずは自己紹介しようよ。私は中西(なかにし)ひまり。高校2年」 「俺は、衣笠(きぬがさ)(かおる)。同じく高2。高校は……」 「見ればわかる。私のとこも言わなくても別にいいよね?」 「……どこ?」 「うちの高校、あなたのとこのすぐ近くなんだけど! 通学範囲としてはわりと被ってるんだから、頭の片隅には入れておいてよ」 「……そういう制服だったか?」 「もう今から覚えて! 英単語1個分くらいの脳細胞で、制服のデザインくらい覚えられるでしょう!」  けっ、エリートは公立高校とか眼中にないってか。きいいい、やっぱりこいつ腹立つわ。
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