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【 口裂け花子 】
それから私は、お化け屋敷でのアルバイトに行く日にはいつも、彼に特殊メイクを施してもらい、口裂け女を演じた。
リアルなその特殊メイクは、たちまち評判となり、以前のように殴られることも、シラケたりすることもなくなった。
「私、きれい?」
「きゃーーっ!」
この快感がたまらない。
遼さん、ありがとう。今、口裂け花子は、この遊園地でも有名になりました。
「遼さん、今日ね、テレビの取材まで来たの♪ 遼さんのこの特殊メイクのおかげだよ♪ ありがとう♪」
「そうなんだ。良かったね。花ちゃんの演技もうまくなって来たんじゃない?」
「ううん、遼さんのおかげだよ」
私は甘えるように遼さんの胸の中へ飛び込む。
遼さんもいつしか私をやさしく抱きしめてくれるようになった。
そして、裂けた口のまま、この夏の夜、私たちは初めて唇を重ねた。
特殊メイクなんて忘れるほど、激しく。
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