【 お化け担当 】

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【 お化け担当 】

 私はこの遊園地で、華々しいパレードの中、綺麗なドレスを着てお仕事をしたかった。  せめて、遊園地の花形、観覧車やメリーゴーランドくらいなら良かったのに。 「花子さ~ん、出番ですよ~」 「はい」  私の付けている口が裂けている特殊メイクは、今やとても古い物。  ハロウィンの時にお客さんがしてくる特殊メイクの方が、よっぽど完成度は高い。 「私、きれい?」 「はいはい、きれいです」  今日、21回目のマスクを外す。 「これでも?」 「なんだ、ちゃっちい口裂け女だな」  また今日も、お客さんをシラケさせてしまった。  大体この口裂けのマスクが、ネットショッピングで売られているようなレベルだから、もうお客さんもちょっとやそっとじゃ驚かない。  そんなある日。一つ気付いたことがあった。  昨日も来ていたお客さん。 「私、きれい?」 「……」 「これでも?」 「……」  その人は、私のこの裂けた口元をじーっと見つめていた。
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