【 出会いは暗闇で 】

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【 出会いは暗闇で 】

 脅かしていた私の方がビクッとして、思わず体を後退させた。 「あっ、ごめん。思わず触っちゃった」 「は、はい……?」  思いっきり裂けた口を手で覆いながら、私の頭の中は混乱している。 「あ、あの……、怖くないですか? この裂けた口?」 「はい、全く」  その男性は頭の後ろを左手で()きながらそう答えた。 「その口、僕に治させてもらってもいいですか?」 「えっ?」 「その君の裂けた口を僕に治させてもらえませんか?」 「はっ?」  この人は何を言っているんだろう? 「こ、この口は作り物ですから、ご安心下さい」  って言っている私も、何を言っているんだろう……。  そんな不思議な彼との出会いは、このおどろどろしい音楽が流れるお化け屋敷の中だった。
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