【 不思議な彼 】

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【 不思議な彼 】

「君、アルバイトだよね? 今日、何時上がりなの?」 「えっ? はい、3時です」  あれっ? 私、何答えちゃってるんだろう。 「じゃあ、3時過ぎに、遊園地の出口のベンチで待っているから」 「えっ? 出口のベンチで?」 「ああ、ダメかな? その口を見ていたら、どうしても治したくなっちゃって」 「へっ? は、はぁ……」  思わずコクリと首を縦に振り、この裂けた口から謎のイエスの回答が……。 「良かった。じゃあ、また後で」 「は、はい……」  彼はなぜかこのお化け屋敷に、爽やかなミント系の香りを残して笑顔で去って行った。 「あ、あれっ? これって、ひょっとしてナンパ? こんなに口が耳元まで裂けているのに?」  信じられない。こんな恐ろしい口でナンパされるとは。  しかも近くで見たら、彼って意外にイケメンだった。  私はその後、バイト終わりまで彼の触れたこの裂けた唇が火照り、全くお化けとして役立たずだった。  何だろう。この感覚は……。
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