第一話

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君は一人で苦しそうにベンチに座っていた僕を見つけてくれた。 涙を流していた僕を見つけてくれた。 君はそんな僕にこう言ってくれた。 『辛かったんだね。でも。でも。それでも。私がいると言いたかった。生きてていいって…そう言いたかった』 『何で…?僕なんかを?』 僕は君の目を見つめて言った。 すると君は少し笑ってこう返してくれた。 『君が大切だからだよ。冬樹』 大切…か。 そんなこと言われたの……15年ぶり。 あれ…?どうしてだろう。 涙が。 止まらない。 涙が溢れ出して。心の堤防が決壊していって。止まらなくなった。 今まで溜め込んでた苦しみが止まらなくなった。悲しみが。孤独が。 癒やされた気がした。 すると彼女は何も言わずに。 ただ。 ただ。 抱きしめてくれた。 暖かくて。 僕は少し。 生きてていい気がした。 その日。 僕は初めて安眠するかのようにぐっすり寝れたんだ。
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