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後
夏の夜風は少女に涼しさを感じさせない。人工的に作られた肌に汗は流れない。
河川敷に一人座る少女は辺りを見渡す。遠くには崩れかかった橋があった。ヒビの入った地面を指でなぞり、
「荒廃した大地」
コンクリートのガレキの山を見て、
「崩れた建物」と呟く。
自分の隣を見つめるが、そこには誰もいない。もう虫の鳴き声もしない。
「生き物がいない…」
少女は立ち上がり、夜空を仰ぐ。腰に手を当て、そのまま上体を軽くそらす。
「世界が滅んでも、夏は来るんだよねぇ」そう言う少女の表情に陰は無い。
遠くの方で、打ち上げ花火が上がった。
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